PCR検査に追われ医療「パンク寸前」 有効な資源活用に無症状外さざるを得ず


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 沖縄県は感染拡大に伴い、保健所や感染症指定医療機関が濃厚接触者の調査やPCR検査で業務過多に陥っているとして、検査対象者の見直しに踏み切った。限られた医療資源を重症化しやすい人らに充てるための方針転換となる。玉城デニー知事は政府に対して法的権限や予算の強化を求めつつ、県民側の努力も強調。これ以上、感染拡大が続くならばさらに強い対策に踏み切ることも示唆した。

新型コロナウイルス感染拡大を受けて記者らの質問に答える(左から)高山義浩医師と玉城デニー知事=7日午後、県庁

 従来のPCR検査の方針は無症状者でも徹底して検査して陽性者を捕捉、隔離して市中感染を防ぐことに重点が置かれていた。

 だが市中感染が起きた後では、保健所は濃厚接触者を探す調査業務に、指定医療機関はPCR検査業務に追われて「パンク寸前」(糸数公保健衛生統括監)に。県は重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や基礎疾患を有する人らの治療体制を整えるため、濃厚接触者でも無症状の場合は検査は実施しない方針に転換した。

 県の医療関係者は「県外からの移動を止めないと感染拡大は収まらない」とみる。玉城知事は県民には渡航や外出の自粛を求めるが、観光客の来県には自粛は求めていない。疲弊する県経済に配慮し、政府の観光支援事業「GoToトラベル」の推進を容認しているからだ。

 玉城知事は「GoToトラベルは、賛否両論あるが、他方で県内の観光業界は感染拡大防止ガイドラインの順守を懸命に努力している。医療現場もしっかり頑張っている。総力戦で当たっていくということが今は肝要だ」と述べ、県民側の努力で難局を乗り切れるとした。

 県外からの渡航自粛要請に踏み切れない背景には「自粛と補償はセットの議論」(県幹部)となり、県の財政では賄えないこともある。また仮に実施しても強制力はないので、実効性に課題が残る。

 玉城知事は「国は都道府県や市町村が権限を持って行動するための法律や指針、財源の裏付けをしっかり明言すべきだ。それがあって県民の生命を守る取り組みに集中できる」と国に対応を求めた。

(梅田正覚)