敗訴の陸自配備めぐる石垣住民投票訴訟 「人権救済の役割放棄」 原告市民ら落胆


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石垣市の住民投票を巡る判決が却下されたことを受けて、記者会見を開く(左から)中村昌樹弁護士、大井琢弁護士、石垣市住民投票を求める会の渡久山修副代表=27日午後、県庁記者クラブ

 「裁判官は逃げた」「残念だ」。石垣市への陸自配備計画の賛否を問う住民投票の実施を巡る訴訟で那覇地裁は27日、原告の訴えを退けた。「門前払い」ともいえる判決に弁護団、原告団には落胆と怒りが広がった。石垣市で結果を待つ市民からもため息が漏れたが「何としても住民投票を」と、今後の活動に向けて意欲を示す声も上がった。

 「司法権をつかさどる裁判所として、ありえない判決であるというほかない」。判決を受けて大井琢弁護士ら弁護団は同日午後、那覇市の県庁で会見し、判決内容を批判する声明を発表した。

 判決について大井弁護士は「裁判官は実体判断、中身の判断から逃げた」と指摘した。「裁判所が人権救済の最後のとりでとしての役割を放棄するものだ」と語気を強めた。原告団の一人で石垣市住民投票を求める会副代表の渡久山修さん(63)は「残念な思いでいっぱいだ。市民に向き合った判決ではなかった。民主主義の根幹が問われている」と肩を落とした。

県庁記者クラブとリモートでつないだ会見で判決への受け止めや今後への意気込みなどを語る石垣市住民投票を求める会代表の金城龍太郎さん(中央)ら=27日、石垣市の大濱信泉記念館

 門前払いの内容に、石垣市内で判決を待っていた同会のメンバーには困惑が広がった。だが、市に住民投票の実施義務があるというこれまでの主張は「否定されていない」と前を向き、住民投票の実施に向けて歩みを進める思いを新たにしていた。

 同会代表の金城龍太郎さん(30)は那覇地裁に赴いたメンバーからの連絡を受け、天を仰いだ。「法律の狭いところで暮らしているような、権力を持つ人たちの都合の中でしか僕たちの権利は生きていないのかなという印象だ」。金城さんは想定になかった判決内容をそう表現し、静かに批判した。宮良麻奈美さん(27)は「主張がどう判断されても受け止める覚悟はあったのだが、判断すらされなかった」と困惑の表情を浮かべた。

 提訴からおよそ1年。住民投票の対象となる平得大俣での陸自配備計画は進展し、27日も工事は行われた。金城さんは「悪い意味で捉えると、住民投票の実施が延ばされた。ただ、実施義務があるという強い証拠も集まり、請求が間違っていないと確信した1年でもあった」と訴訟の意義を語る。「市に実施義務があるとの主張は否定されていない。そこは自信を持って引き続き住民投票を求めていきたい」と強調した。

※大井琢弁護士の「琢」は旧字