大学入学共通テストの2回実施 一方は現役だけは不平等、難易度調整も難点<言わせて大学入試改革>


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南風原 朝和

 本欄を隔月交代で担当されている灘高校の木村達哉先生が7月24日の記事で書かれているように、来年1月に大学入試センター試験に代わって初めて実施される大学入学共通テストは、2週間の間隔で本試験が2回実施されることになった。

 新型コロナウイルス禍による高校の長期休校に伴う「学業の遅れ」への救済策として、2週間遅れの第2日程が設定されたのである。ただ、第2日程を選択できるのは現役のみとなっており、その点を木村先生は不平等であると指摘している。

 不平等はそれ以外にもある。まず挙げられるのは二つの日程で試験の難易度を同じにすることができない点である。学業の遅れを理由に第2日程を選んだ場合、もし第2日程の試験が第1日程より難しいものであったら、救済どころか、さらなるダメージを与えることになる。逆に第2日程のほうが易しかったら、それはそれで試験として公平性を欠く。

 文部科学省などの説明では「難易度はおおむね同等にできる」とのことだが、実施の実績もない新しい共通テストで、それができる保証はない。それなのに得点調整の準備もせずに、二つのテストの結果をそのまま比較して合否判定に使わせるのは無謀であり、無責任である。

 もう一点、不平等が懸念されるのは、二つの日程で設置される試験場についてである。

 7月に文部科学省が全国の高校生に調査した結果では、第2日程を希望する割合は7%にすぎなかった。救済策として当の高校生にも歓迎されていないことが分かる数字である。仮にこの割合で二つの日程が選ばれるとしたら、例えば沖縄県内の宮古試験場、八重山試験場はわずか数名ずつの受験者となる計算になる。

 そうなると、これら離島の試験場は設置されない可能性が高くなり、第1日程なら宮古・八重山で受験できたのに、第2日程だと泊りがけで本島まで出掛けなければならなくなる。こうして地理的格差が拡大され、新たな不平等が生まれる。

 もしかしたら、わずか数名の受験者でも第1日程と同様に離島の試験場を設置するのかもしれない。しかし、それだけの人的・財政的コストをかけて第2日程を強行する必要があるのか。もはや受験者ではなく、制度設計が甘かった政策を救済する意味しかないのではないか。

 この政策の見直しがなされないなら、受験者全員が第1日程を選択することでしか、不平等を回避できないかもしれない。
 (南風原朝和、東京大学元副学長)