菅内閣発足 地銀の再編、圧力強化か 県内3銀行も動向を注視


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「ポスト安倍」の新首相に就任した菅義偉氏は、自民党総裁選の中で地方銀行について「数が多すぎるのではないか」と発言するなど、地銀統合について言及してきた。政府は地銀の再編促進を狙い、独占禁止法による合併の制限を緩和する特例法を5月に成立させている。新政権の発足後は業界再編の圧力が強まる可能性があり、地銀3行体制が続く沖縄の金融関係者も動向を注視している。

 これまで民間銀行が日銀に預金すれば利息が付いた。また、比較的利回りが高い国債を満期まで保有するだけで銀行は一定の収益を確保できた。だが、安倍政権で打ち出された大胆な金融緩和政策により、地銀の経営環境は一変した。

 ■副作用

 16年には日銀が初のマイナス金利の導入にまで踏み込み、日銀に一定額以上を預けると民間銀行が利子を払わなければいけなくなった。投資マネーが国債に流れることで、10年国債の利回りはゼロ近傍で推移するなど、国債の利回りも急速に低下する。

 琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行の県内地銀3行でも16年3月期と20年3月期の決算で比較すると、銀行収益の柱だった国債を含む3行合計の「有価証券残高」は、4年間で約4758億円(約38%)もの減少となっている。

 アベノミクスの「副作用」に全国の金融機関があえいでいる状況だ。

 それでなくとも国内の地銀は元々、人口減少や過疎化の中でビジネスモデルに構造的な課題を抱えてきた。菅氏は今月2日の総裁選出馬の記者会見で地銀の数の多さに触れ、翌3日には「再編も一つの選択肢になる」と踏み込んでいる。

 ■景気の拡大と悪化

 ただ、沖縄は人口や世帯の増加が続き、19年までの入域観光客数の増加による県内景気の活況もあった。貸出金は3行ともに4年連続で増加し、20年3月期決算は16年比で6266億円(約18%)増加している。利ざやの縮小を貸出量の拡大で補ってきた。

 県内金融機関の幹部は「沖縄に3行は多いと思われるかもしれないが、マーケットが拡大している。他県の地銀と比べると、3行が存在できる余地はまだある」との見方を示す。

 収益源が縮小する中で、3行は「支店内支店」という形で事実上の支店統合を進めるなど、経費節減も推進している。一方で、過度な業務合理化や新たな手数料導入などは顧客の反発を招きかねず、各行が横にらみで出方をうかがう慎重姿勢もある。さらに、新型コロナウイルスによる景気の悪化で与信コストが次第に増してきている。

 帝国データバンクのメインバンク動向調査によると、県内の企業がメインバンクとしているのは琉銀、沖銀、海銀の3行で全体の90%以上を占める。

 政府関係者は「沖縄の地銀はとりわけ地域の事業者との結びつきが強い。すぐに再編ということはないのではないか」と指摘しながらも、「全国の地銀は越境して他地域に進出するなど、試行錯誤を繰り返している。沖縄の金融環境だけが現状のまま続くとは断言できない」と見通した。

(池田哲平)