撃たれるリスクと「黒人の作法」<Black Lives Matter運動から見えたこと>①


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 米国ではここ数年、黒人が警察に命を奪われるたびにBLM(ブラック・ライブズ・マター)運動が起きるが、今回は何かが違う。なぜ、BLM運動はアメリカ全土に拡大しているのか。黒人差別問題の根本を知りたいと思った。

 先月、バージニア州在で県出身の友美さんがTBSの取材に応じている映像を見た。友美さんは「黒人ファミリーの一員になって黒人差別の現実を知った。夜、買い物を頼む時に夫は、近くのコンビニへも服を着替え、ひげをそり、身なりをきちんとして出掛けるのが日常的な習慣だ。それは、警察とのトラブルを避け怪しまれないようにするため。義母からは4歳になる一人息子に警察の前では手を前に出し、突発的な行動は慎むよう教えなさいと言われた」と語っている。

 黒人が守る16のルールという漫画仕立ての動画がある。若い黒人が従うべき暗黙の決まりは、まずポケットに手を入れてはいけないということ。凶器を隠していると思われるからだ。パーカのフードはかぶってはならない。犯罪を行うために顔を隠していると思われるから。身分証明書なしで外に出ない。なぜなら強盗だと思われるから。

 警察に職務質問されたら反論せず協力的でなければいけない。さもなければ連行されるからだ。警察に車を停止させられたら、ダッシュボードに両手を乗せて、運転免許証と登録証を出してもいいかを尋ねる。それをせずに探そうとすると、怪しい動きをしたとして撃たれてしまうからだ。

 黒人の母親は子供に対し、生きていくためのルールとして、それらの決まりを教えるのである。息子は泣きながら聞く。「何で黒人に生まれただけで、そんなことをしないといけないの」と。母親は「あなたの命が理不尽に奪われるのは耐えられないから。これが現実」と諭すのである。

 警察による暴力を調査する団体マッピング・ポリス・バイオレンスによると、黒人の人口は米国全体の13%だが、2013年から19年の間に、黒人が警察に殺される割合は、白人男性の3倍という結果が出た。「黒人である」というだけで侮辱されたり、殴られたり、命を奪われたりする。直接的な差別行為に苦しめられ、戦々恐々とした日々を送っている。

 だが、そのような目に見える差別以外に深刻なのは、目に見えない差別が社会を構成していると言うことなのである。それらを知ることによって、黒人への差別問題の核心に向き合えるのではと思う。

 (鈴木多美子バージニア通信員)