温暖化で軟質サンゴ拡大 琉大チーム予測 イシサンゴ減少 遺伝学的手法で解析


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 琉球大学理学部のライマー・ジェイムズ准教授が属する研究チームが8月31日、県内で一般的に見られ、サンゴ礁を構築する「イシサンゴ類」が今後、海洋温暖化や海洋酸性化の影響を受け、柔らかい軟質サンゴ(ソフトコーラル)などに置き換えられる可能性があると発表した。

阿嘉島のイシサンゴ類=8月(ライマー・ジェイムズ氏提供)

 サンゴ礁はサンゴの骨格から複雑な地形をつくり、生物のすみかや隠れ場所になるなど海洋生態系を支えている。イシサンゴ類が減少することは、海洋生態系のみならず漁業や観光業へ影響を与えかねない。

 チームは遺伝学的手法を用いて、世界の海で過去に起きた事例を参考にしながら考察を立てた。沖縄を含む世界中の熱帯・亜熱帯地域のサンゴ標本200以上を解析。2千の特定領域を比較し、進化経路を示す「系統樹」を作成した。

 解析の結果、イシサンゴ類はこれまで確認されている最古の化石より2億5千万年古い、7億7千万年前から地球上に存在していたことが明らかとなった。環境変動があった時期と系統樹を比較すると、海洋温暖化や酸性化でイシサンゴ類など9割のサンゴが絶滅した後は、軟質サンゴが繁栄したことが分かった。

 ジェイムズ准教授は「県内で撮影された70年代の海中写真を見ても、イシサンゴ類は数が減っている。一部の海域では“ソフトコーラルの庭”に置き換わっている」と指摘する。「残念ながら将来、サンゴ礁はさまざまな群集に変わる可能性がある。生態系を守るためにも、研究により理解を深めていきたい」と力を込めた。

 研究成果は英科学誌ネイチャーの関連誌「ネイチャー・エコロジー&エボリューション」のオンラインで8月31日に掲載された。