2013年7月16日、安倍晋三首相は参院選投開票日の5日前、沖縄選挙区の党公認候補を応援するため沖縄を訪れた。県民広場前で行われた演説会で首相は「米軍基地全体の74%(当時)が沖縄にある。負担を軽減しないといけない大きな責任がある。負担が減ったと実感してもらえるよう努力したい」と声を張り上げ、基地負担軽減を約束した。しかし、首相の応援は奏功せず、支援した候補者は落選した。
それから7年余。安倍首相が選挙応援で来県する機会は最後までなかった。しかし安倍政権は沖縄の選挙に積極的に介入し、辺野古新基地建設に反対する「オール沖縄」勢力を弱体化させることに躍起となった。
全国の国政選挙での連勝を背景に「安倍1強」政治と言われた安倍政権は、選挙で示された沖縄の「民意」を都合よく解釈してきた。沖縄は2013年12月に当時の仲井真弘多知事が辺野古埋め立てを承認して以降、辺野古新基地建設の是非を最大争点に知事選や国政選挙などが実施されてきた。
政府与党は新基地建設を円滑に進めたい思惑から選挙があるたびに、官房長官や幹事長ら政府や党の幹部らを大量投入し、地方議員や経済界を集めた会合を繰り返すなど、てこ入れを図った。
しかし、政府与党が支援する候補が敗北した選挙では「選挙の争点は一つではない」(菅義偉官房長官)など評価を避ける場面が目立った。一方、政府与党が推す候補が勝利した場合は「(辺野古の)理解が進んでいるのではないか」(菅氏)などと述べるなど選挙結果によって発言を変えた。
県内では14年の知事選で新基地建設「反対」を一致点に従来の革新共闘に保守勢力や経済界が合流した「オール沖縄」が誕生。その後の知事選や衆院選、参院選など全県選挙のみならず、普天間飛行場を抱える宜野湾市長選や名護市長選は「オール沖縄」勢力と政府与党の全面対決の様相を呈してきた。
政府与党が支援した候補者が当選した16年1月の宜野湾市長選の際に菅氏は「オール沖縄という形で沖縄の人が全て(辺野古移設に)反対のようだったが、言葉が実態と大きく懸け離れている」と述べた。
菅氏は政権ナンバー2として安倍首相に代わって沖縄の選挙や基地問題、沖縄振興を取り仕切ってきた。その菅氏が次期自民党総裁の最有力候補に躍り出た。仮に菅氏が新たな総裁に就任すれば、安倍政権の沖縄に対する姿勢が継続されることは確実で、今後の選挙も政府と「オール沖縄」勢力による全面対決は続きそうだ。
(吉田健一)