[日曜の風・吉永みち子氏]政権の古い体質 変わるべきは国民か


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 先週から立て続けに台風が接近している沖縄は、9月初めての日曜も激しい風が吹き荒れているのでしょうか。お見舞い申し上げます。東京も永田町界隈から古い自民党の体臭ムンムンの強烈な風が吹きつけて気持ちが折れそうです。

 それにしても、アベノミクスで始まりアベノマスクで終わった超長期安倍政権の支持率が辞任表明したら一気に20%も跳ね上がったのにはびっくり仰天。コロナ対策は後手後手でほぼ無策、森友、加計、桜も逃げるばかりで説明責任は一切果たさず、沖縄の声は完全に無視…。負の遺産もここまで積もればさすがに支持率低下中だったのに、その状況が何一つ変わらないのに何で上がるんだ? 実に不可思議な国民の反応である。

 想像するに…病気が再発するほど頑張ってたんだ。ごめんね、批判なんかしちゃって。これまでのことはみんななかったことにしてあげるね…とまあ、こんな具合でしょうかね。

 日本って国は、政治でも日常生活でも納得できないことや許しがたいことなど、結局は水に流して忘れちゃう傾向がある。「ま、問題はありましたが、そこのとこはひとつ水に流して…」という曖昧な笑いと共になかったことにしてしまう。そうやって問題としっかり向き合わないから、変えるべきことを変えられずに同じ過ちを繰り返す。

 なぜ日本人は何でも水に流すのかと友人に話したら「水が豊かな国だからじゃないの」という答えが返ってきた。そんなバカな!と思ったが、なるほど!と思えなくもない。水の少ない国や川の流れが遅い国では、流したくても流れないから忘れず粘り強い傾向があるような…。

 しかし、派閥の領袖(りょうしゅう)たちが揃って会見して手柄を強調する姿や、勝ち馬に乗るべく雪崩を打つ姿は、自民党の古い体質そのもの。さらに安倍政権下で当たり前になった公文書の隠蔽(いんぺい)、改ざん、破棄や、国会の軽視、説明責任の放棄や不誠実な政治姿勢など、断固改めなければならないことなのに、平気で「前政権のすべて継承する」と言ってはばからない。それで国民に通用すると思っているからだろう。政治は変わらないと諦める前に、変わらなければならないのは私たちなのかもしれない。

(作家)