台風19号で水没の川崎市民ミュージアム 収蔵品を公開 沖縄関係資料も被害


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
台風で浸水被害を受けた古文書などの修復の様子。沖縄関係資料も多い=7月30日、神奈川県の川崎市民ミュージアム

 【神奈川】大正時代から就職などで沖縄県出身者も多く居住してきた神奈川県川崎市にある市民ミュージアムの地下収蔵庫が昨年10月12日の台風19号で水没し、所蔵資料の多くが浸水などの被害に遭った。7月30日、被災以後初めてメディアに館内を公開した。同ミュージアムには移民や民俗などの沖縄関連の資料も多く所蔵されているほか、沖縄芸能の発表の場にもなってきた。

 被害総額は建物も含めると72億円と見積もられている。紙類はカビを防ぐため冷凍保存され、絵画類は洗浄後乾燥、薫蒸を実施、破損状況を見ながら修復作業の検討に入る。人間国宝の陶芸家浜田庄司の資料を含む陶器類は特に破損は見られず、洗浄処理と薫蒸が始まっていた。

 同ミュージアムは博物館と美術館を合わせた機能を持っており美術品、歴史的史料だけでなく、沖縄とゆかりの深いものも収蔵していた。「美わしの琉球」を作詞した川崎出身の詩人で、詩集『琉球諸嶋風物詩集』を著した佐藤惣之助が、1933(昭和8)年に首里で限定150部を発行したとされる『螢蠅盧(そうのすけ)句集』など著作物や資料、直筆の色紙なども保管。

 さらに壺屋で陶芸の技術指導をした浜田庄司の陶芸資料約数百点、琉球政府から寄贈された石敢當、川崎への沖縄移民が継承した沖縄民俗芸能の写真なども収蔵されていた。

 2008年にミュージアムが催した企画展「オキナワ/カワサキ―二つの地をつなぐ人と文化―」のパンフレットによると、17~18世紀のパナリ焼、浜田庄司陶芸資料(19世紀頃の渡名喜瓶、嘉瓶、アンビン、チューカー、抱瓶、厨子甕等)、絵画では岡田青慶の「八重山の踊り子」、岡信孝の「沖縄壺屋画巻」、文学史料としては新井白石『南島志』の所蔵があったが、全て浸水した。

 膨大な収蔵品の修復にはさらに専門家と資金が必要で終了のめどは立たないという。同館は「市民ミュージアム収蔵品の修復」に向けた寄付金を募集している。問い合わせは、市民文化振興室(電話)044(200)2280。
 (山川夏子首都圏通信員)