自民総裁選の3候補に聞く 沖縄関連の政策は? 沖縄振興策で違い


自民総裁選の3候補に聞く 沖縄関連の政策は? 沖縄振興策で違い
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 【東京】14日に投開票される自民党総裁選に向け、琉球新報は立候補している石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長に沖縄政策に関するアンケートを行い、13日までに回答を得た。2021年度末で期限を迎える沖縄振興特別措置法の継続の是非について石破氏が「継続すべき」だと回答したのに対し、菅氏は「検証結果を踏まえて検討する」、岸田氏は「県の要望を丁寧に承る」とし、姿勢に違いが見られた。

 名護市辺野古の新基地建設問題については3氏とも移設計画を進める考えで一致した。

 ただ地元理解を得る方法は石破氏が「県知事、市長、市民との対話を綿密に重ねる」とした。岸田氏は「丁寧に頻繁に、現地に足を運び、対話を重ねる」と回答し、首相となれば自ら説明に乗り出す姿勢を鮮明にした。菅氏は「引き続き政府の考え方や取り組みについて丁寧に説明し、地元の皆さまのご理解、ご努力を得られるよう粘り強く取り組む」と従来の政府答弁を踏襲した。

 アンケートは8日に調査票を送付した。軟弱地盤の発覚により辺野古の工事が大幅に遅れる見込みとなった中、辺野古移設計画の見直しの是非や米軍普天間飛行場の負担軽減策、日米地位協定の見直し、沖縄振興特別措置法の継続の是非、インターネット上で広まる沖縄に関する偽ニュースや憎悪感情をあおる情報に対する対応を聞いた。

3候補回答詳報

石破氏 地位協定改定の方向に

 防衛相も務めた石破茂氏は米軍普天間飛行場の移設問題への対応について「普天間の危険性の除去、名護の皆様の苦渋の決断を踏まえ、現在唯一の方策である現行計画(辺野古移設)を進めるより他にない」とし、現行計画を進める必要性を強調した。ただ、進めるに当たっては「沖縄県知事、市長、市民との対話を綿密に重ねるべきだ」と付け加えた。

 軟弱地盤の発覚などに伴い辺野古の移設工事が大幅に遅れる見込みとなった中、普天間の負担軽減策については「防衛政策上の合理性の検証を不断に行い、さらなる(訓練の)本土移転も含めた負担軽減策を検討するべき」だとの考えを示した。

 全国知事会も提言している日米地位協定の改定については、北大西洋条約機構(NATO)や太平洋安全保障条約(ANZUS)を参考に、米国内に自衛隊基地があった場合を想定した在米の自衛隊と在日米軍の地位を比べるべきだとし「相互主義の観点も含めて改定の方向性を考えるべき」だとした。

 沖縄振興特別措置法の継続の是非については、現行法の最終年度となる2021年度以降も「継続すべき」だと踏み込んだ。

 リーディング産業である観光業の振興だけでなく、農林水産業でもデジタル技術を活用した生産性や所得の向上が必要だとした。沖縄科学技術大学院大学を中心とした高度人材の育成、第2次産業や知識集約型産業の創業・育成にも力点を置くとした。

 インターネット上での憎悪表現などへの対応は「フェイクニュース、ヘイトスピーチ、いじめなどについては、罰則を含む適切な法的措置を速やかに講じる態勢構築などの対応が必要だ」とし、人権侵害などへの対策を進めたい考えだ。

菅氏 返還地利用が発展の鍵

 沖縄の基地負担軽減担当相も務める菅義偉氏は、米軍普天間飛行場の辺野古移設計画について「日米同盟の抑止力維持と普天間飛行場の危険性除去を考え合わせ、検討を重ねた結果が辺野古移設が唯一の解決策という現在の方針だ」と強調する。「着実に工事を進めることこそが普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現する」と工事を進める考えを示した。

 普天間飛行場の早期の危険性除去策は、空中給油機の岩国飛行場移駐やオスプレイ訓練の県外移転を進めたとし「辺野古移設を待つことなく普天間飛行場の危険除去を進めるため、引き続き、できることは全て行う」とした。

 日米地位協定改定については、効果的かつ機敏に対応できる適切な取り組みを通じ、個々の問題に対処したと説明した。「協定の在り方についてさまざまな意見があることは承知している」としつつ「目に見える取り組みを積み上げていくことで、協定のあるべき姿を不断に追求する」と政府の姿勢を踏襲した。

 沖縄振興特別措置法の継続の是非については、現在、これまでの取り組みを検証しており「その結果を踏まえて検討する」とした。

 一方、基地返還跡地の利用が沖縄の発展に「特に重要」と指摘。西普天間住宅地区跡地の開発が今後の跡利用の「モデルケースとなるようしっかり取り組む」とした。返還が見込まれる嘉手納飛行場以南千ヘクタールの土地の活用にも触れた。

 沖縄の自然・文化資源を生かした観光振興や、首里城の再建を「国が責任を持って進める」とするなど個別事業にも言及した。

 偽ニュースやヘイトスピーチ対策は「一般論」として「事業者の適切な取り組みを促し、啓発を行うなど必要な対応を進めていくべき」だと回答した。

岸田氏 新基地建設へ自ら対話

 元外相の岸田文雄氏は、名護市辺野古の新基地建設について「原点は世界一危険だとも言われる普天間基地の返還」であり「引き続き、SACO(日米特別行動委員会)合意に基づく基地負担の軽減に全力で取り組む」とした。県民理解を得るため「丁寧に頻繁に現地に足を運び、対話を重ねる」とし、首相となれば前面に立ち沖縄側に理解を求めていく姿勢を示した。

 移設工事の長期化が見込まれる中での普天間の負担軽減策は、本土や国外への訓練移転など、やるべきことは全てやるとしつつ「即時無条件閉鎖は難しい」とした。一方、SACO合意から24年が経過し、国際情勢や安全保障に関わる科学技術も刻々と変化する中「デジタル戦争時代も見据えた、新たな抑止力と基地負担軽減のグランドデザインを描いていかなければいけない」と語った。

 日米地位協定の改定については、外務大臣時代に環境や軍属に関する補足協定を締結したことに触れ「実質的な地位協定の改定を実現し、さまざまな運用改善はなされた」と強調。今後も米軍基地所在市町村の声を踏まえ「見直すべき点は果敢に見直し、米側と交渉を続ける」とした。

 2021年度末で期限を迎える沖縄振興特別措置法の継続に関しては「県としての要望を丁寧に承りたい」とするにとどめた。振興策に国がコミットするには、沖縄がアジアに近い地理的優位性を生かし、観光や情報、金融、医療、物流、農林水産業の分野で「沖縄が新たな社会モデルとなり得る、という視点が大事だ」とした。

 ネット上の偽ニュースや憎悪感情をあおる情報への対応については「表現の自由に最大限配慮しながら、誹謗(ひぼう)中傷などへの被害回復が容易となるような制度を整えたい」とした。