新総裁に菅氏、沖縄経済界は手腕期待 コロナで打撃深刻 振興予算3500億円要望


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官房長官として那覇空港第2滑走路建設の現場で進展を視察する菅義偉氏(左)=2019年3月24日、那覇空港滑走路増設事業現場

 安倍政権下で沖縄振興予算は2014年度をピークに減少し、20年度は3010億円となった。自民党総裁に選ばれた菅義偉氏が次の首相に就く見通しとなったことに、県建設業協会の津波達也会長は「感染症収束後の観光振興の基礎になるインフラ整備をしっかり進めるためにも、3500億円規模に戻して公共投資をさらに充実してほしい」と要望した。

 沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は、新たな沖縄振興に向けて「物流をダイナミックに進めるための関連税制など、新たに必要となる制度もある。沖縄の有利性を生かすためにも、規制緩和にも取り組んでほしい」と述べた。

 新型コロナウイルス感染症の甚大な影響を受けている観光業界。沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「台湾をはじめ感染症の拡大が収束し、安全が確認された国・地域との交流再開を早めに実現してほしい」と求めた。短期的には感染症からの回復が最優先とした上で「中長期的に沖縄観光のポテンシャルを拡大するためには、キャンプ・キンザーの返還跡利用など、米軍基地問題の早期解決にも取り組んでほしい」と話した。

 県ホテル協会の平良朝敬会長は、菅氏が米軍普天間飛行場の辺野古への移設を進めるとしていることには「気持ちとして受け入れ難い」と話す。一方で、那覇空港第2滑走路の工期短縮などが菅氏の手腕で実現したとして「沖縄の経済が上がっていくことは間違いない」と経済面で期待を寄せた。

 経済政策の方針転換を求める声もある。県中小企業団体中央会の島袋武会長は「アベノミクスの恩恵は中小零細企業にまで降りてきていない。別の経済政策が必要だ」と指摘。県民所得を向上させるためにも、県内で利益が回るような沖縄振興の在り方を追求するよう求めた。

 JA沖縄中央会の大城勉会長は、安倍政権の農産物の輸出拡大戦略により、県内の農産物も恩恵を受けたとする。一方で食料自給率の向上や生産基盤の強化については課題が残るとして、菅氏に対し「生産現場に合った有効な政策支援を実施するよう、生産者の声に耳を傾けていただきたい」と注文した。県漁業協同組合連合会の上原亀一会長は、漁業面での日台、日中交渉について「地元漁業者の声が十分に聞き入れてもらえず、不満の残る内容になっている。地元漁業者と真摯(しんし)に向き合い、安心して漁業できる環境を早急に築いてほしい」と要望した。