【宜野湾】4月に宜野湾市の中心にある米軍普天間飛行場から発がん性などの有害性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS)を含む大量の泡消火剤が基地外へ流出し、周辺住民の不安が高まっている。これまでも基地周辺の湧き水などで高濃度PFASが検出されているが、市は「(基地からの汚染を)特定できる根拠が示されていない」として踏み込んだ施策を打ち出せていない。識者は「市は汚染源を曖昧にせず、証明に努めるべきだ」と指摘している。
「県調査で湧き水から高い数値が出ていることは直接、普天間飛行場からと断言できない」。松川正則宜野湾市長は、16日にあった市議会一般質問の答弁でこう述べた。基地内でPFASを含んだ泡消火剤を使った消火訓練が実施されてきたことから、「そのことが起因するのではないかとは当然、推察している」と基地由来の可能性にも言及した。
質問者の野党・桃原功議員(結・市民ネットワーク)が「基地外に大量の泡消火剤を流出させても、なお米軍と特定できないと言うのか」と追及しても、松川市長は「(商業施設や駐車場といった)民間地域でも、泡消火剤を含む施設が整備されている」と民間地域由来の可能性に触れた。
だがその具体的根拠は示さず、「専門家の意見も聞いてからしか(汚染源は)断言はできない」と述べるにとどめ、基地内調査の必要性を関係機関に要請する考えを示した。
PFASに関しては、主に県が基地外の湧き水などを調査してきた。これまでの調査結果から「普天間飛行場が汚染源である可能性が高い」として、国に対策を求めている。一方で市は、高濃度の値が出た湧き水の水を飲まないよう注意看板を立てるなどの対策に追われた。また4月の流出事故を受け独自に周辺地域の水質調査も実施し、高濃度PFASが検出された地点もあった。
沖縄でPFAS調査をしてきた京都大の小泉昭夫名誉教授(環境中毒学)は、これまでの調査結果を基に「基地由来しかあり得ない」と断言する。「市は汚染源を曖昧にせず、基地が由来でないなら、その証明をしないといけない」と指摘した。
また小泉名誉教授は、土壌汚染対策法の健康被害該当物質にPFOSやPFOAを盛り込み、汚染対策などを国に働き掛ける必要性を強調した。実際に土壌汚染が発生しているとして「法律的な問題にした方がいい」と県や市に提言した。
(金良孝矢)