生徒の努力に水差すミス 新共通入試の願書、受験日選ぶ記入欄なし


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木村 達哉

 僕は沖縄が大好きだ。ようやく沖縄に戻ることができるようになり、7月も8月も今月も愛犬さくらと一緒に嘉数高台公園の散歩を楽しんだ。滞在はいつも3~4日だが、毎月沖縄に戻ってウチナーンチュとの触れ合いを楽しんでいる。

 さて、いよいよもめにもめた共通テストの受付が9月28日から始まる。僕が勤めている灘校でも受験案内(願書)を取り寄せ、生徒たちに下書きをさせて、過保護だなと思いながらもそれを教員がチェックしたうえで生徒たちに返却し、いよいよ願書に清書をして回収をしたところである。

 ただ、ここでも文部科学省がミスを犯してしまったことに触れざるを得ない。南風原先生も触れておられた通り、共通テストは第1日程と第2日程が行われる。学習の遅れが生じていると認めるのは学校長ではあるが、少なくともどちらの日程を選ぶのかは生徒個人であるので、願書にはどちらを受験するのかを示す欄を付けておかねばならない。

 ところが、その欄がない。本校の場合は全員が第1日程なので問題はないが、混在している場合には教員がそれぞれの受験者を束にして、まとめることになるそうだ。もし学校や大学入試センターで、その束がバラバラになってしまったら、もう誰がどちらを受けるのか本人にしかわからないということになる。大阪のある高校では、願書に自分たちでどちらの日程を受けるのかの欄をマジックで作ったとのこと。もうこうなるとお笑いである。

 話はこれだけに終わらない。受験案内が送られてきた段ボール箱には「令和3年センター試験受験案内」と印刷されていた。生徒たちは、僕たちはまだセンター試験を受けるのですかと、文科省に対する批判を繰り返した。公文書が入っている段ボール箱である。箱などなんでもいいじゃないかと思ったのであろうか。そうであるとすれば文科省官僚のレベル低下、ここに極まれりと言ってもいいだろう。

 拙ブログでこの件について書いたところ、メディアからの取材があり、それがYahoo!のトップ記事となったことで大きい反響があった。知り合いの教員からフェイスブックを通じて、自分の学校にもセンター試験の箱が届いたとか、中にはセンター試験と書かれた箱にテープが貼られて「センター試験」という文字が隠されていたとかいったコメントが届けられた。どの学校でも文科省に対する批判が渦巻いていたことであろう。

 安倍内閣の末期でのことではあるが、あまりにも末期的すぎはしないか。生徒たちは一生懸命に努力しているが、それに国が水を差すようなことをしてもらいたくはない。このままでは共通テストの当日にまた大変なことが起こるのではないかと危惧している。
 (木村達哉、灘高校・中学校英語科教諭)