【記者解説】コロナ後も続くか 沖縄の地価 7年連続上昇の要因は


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内基準地価は前年比の変動率が住宅地、商業地、工業地で全国一の上昇となった。全国の全用途平均が新型コロナウイルスの影響によりマイナスに転じたのとは対照的に、県内の不動産市況は好調に映る。しかし、上昇基調は新型コロナウイルスの国内での感染拡大が始まる以前の観光産業を中心とした好況を反映したにすぎない。

 観光需要は新型コロナの感染拡大と連動し、観光客への依存度が高い県内の商業地では下落に転じた地点もある。今後、地価全体に新型コロナの影響が表れてくる可能性がある。

 2014年に20年ぶりに上昇に転じて以降、沖縄の地価高騰を支えたのは堅調な観光需要だった。中でも商業地は収益性の高いホテルの建設ラッシュがけん引した。県内宿泊施設は14年に1541軒だったのが19年には3084軒となり、5年間で倍増している。

 だが、18年度に1千万人を記録した入域観光客数は、新型コロナの影響で20年は364万6千人と大幅減の見通しとなっている。コロナの終息は数年を要するとみられ、特にインバウンド(訪日外国人客)の往来がどこまで回復するかは見通せない。国内屈指のリゾート地としての沖縄の優位性は揺らがないが、今後も旺盛な投資熱が続くかは未知数だ。

 近年の地価上昇は建築単価の高騰なども相まって、一般の県民にとっては自宅購入が難しくなった側面もあった。県地価調査分科会副幹事の仲本徹不動産鑑定士は「ここ数年の建築資材の高止まりは今後2~3年は続くだろう。会社員や事業者はコロナ禍で所得が増える見通しが立たないので、自宅購入や投資に乗り出しにくいのではないか」と分析する。感染症の再拡大で県内景気にブレーキがかかれば、土地収益性の低下や投資の減退で、不動産市場の冷え込みにも拍車が掛かる。地価が下落局面に移れば資産価値の目減りなどで金融面にも影響が及んでいくだけに、注視が必要だ。
 (梅田正覚)