【恩納】沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの研究チームは、新型コロナウイルスの重症化リスクを高める遺伝子が旧人「ネアンデルタール人」に由来することを突き止めた。研究結果をまとめた論文が国際科学誌「ネイチャー」の電子版に9月30日付で掲載された。日本など東アジアではこの遺伝子を持つ人はほとんどいないという。
OISTのヒト進化ゲノミクスユニットのスバンテ・ぺーボ教授やドイツ、スウェーデンの研究チームが、ネアンデルタール人の遺伝子と重症化リスクを高める遺伝子を比較し、突き止めた。
これまでの研究では、新型コロナウイルス感染で入院した重症者と入院しなかった感染者計約3千人の遺伝子を調べ、重症化に影響を与える遺伝子が特定されていた。
この遺伝子を持つ人は新型コロナに感染した際に人工呼吸器を必要とするリスクが最大3倍になるという。
ぺーボ氏らはこの遺伝子が約5万年前のネアンデルタール人のものとほぼ同じであることを解明した。この遺伝子を持つ人の割合は、地域で開きがあり、現代の南アジアでは約50%、欧州では16%だった。
旧人は、現代人とは別の人類だが、化石のゲノム(全遺伝情報)分析でわずかに混血していたことなどが判明している。新型コロナの重症化と関連するネアンデルタール人の遺伝子は、ネアンデルタール人と現代人の祖先が出会った約6万年前に、交配で現代人の祖先に渡ったことも明らかになった。
ぺーボ氏は「ネアンデルタール人からの遺伝子的遺産が、現代のパンデミックで悲劇的結果をもたらしていることは衝撃的だ」と語る。
旧人の遺伝子が重症化リスクとなぜ関連するかは分かっていない。ぺーボ氏は「一刻も早い解明に向けて、我々は取り組んでいる」と強調した。