<杉田氏発言を問う・上>うそをつくのは加害者 性暴力に無理解 宮城朋子(フラワーデモin沖縄実行委員)


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 性暴力被害者の相談事業を巡り、自民党の杉田水脈衆院議員が「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言したことに対して、性暴力やジェンダー問題に取り組む人たちから批判が出ている。杉田氏の謝罪と議員辞職を求めるインターネット上の署名は開始から5日間で10万筆を超えた。一方、発言を否定していた杉田氏は1日、更新したブログで、「発言があったことを確認した」と一転して認めた。杉田氏の発言に対し、県内で花を手に性暴力撲滅を訴えてきた「フラワーデモ」の関係者や性差別問題に詳しい識者に寄稿してもらった。

宮城朋子氏(フラワーデモin沖縄実行委員)

 急きょ、フラワーデモをオンラインで行うというツイッターの告知を見て、何事かとネットで検索し杉田水脈衆院議員の発言に関する記事を確認した。以前から慰安婦問題やLGBT(性的少数者)に対する杉田氏の発言が問題になる度に、その言葉のひどさに眉をひそめ、それを支持するネトウヨ(ネット右翼)のコメントにもおぞましさを感じてきた。そこには当事者への想像力のかけらもなく、威勢のいい言葉をただ放ち、「弱者ぶるな」と言っているかのようにしか捉えられなかった。今回の発言について、杉田氏は女性蔑視ではないと言っているようだが、性暴力被害支援事業に絡む国会議員がこのような発言をしたのであれば、「誰のために何が言いたかったのか」と問いたくなる。

 2019年3月、性暴力事件に対する無罪判決が相次ぎ、その判決に「おかしい」と作家の北原みのりさんらが声を上げ、4月11日夜に東京駅前の御幸通りに花を持って集まったのがフラワーデモの始まりである。話をしたい人がマイクを握り、「#With You」の気持ちを花で表した人々がその話にただ耳を傾ける。その静かで優しいデモは日本各地に広がり、沖縄でも県庁前広場で8月から3月までの8カ月間開かれ、800人以上が集まった。

国際女性デーに合わせ開催されたフラワーデモ。花を手に性暴力の撲滅を訴える(左から)宮城朋子さん、高里鈴代さん、上野さやかさん=8日夜、那覇市泉崎の県民広場

 性被害当事者の方々から話を聴くごとに、それぞれが受けたつらい経験はひとくくりにできるものではないと感じる。「家族が壊れるのが怖くて、養父からの性的虐待のことを話せなかった」「その人を頼っている子が困るといけないから(支援者からの性被害を)言えなかった。どうせ自分は子どもだから何を言っても信用されない」。性被害を受けた苦しみに耐えながら、そんな状況に陥った自分が悪かったと自らを責める被害者もいる。

 加害者の中には、性暴力を自分に都合のいいように解釈し、この人なら大丈夫だと狙いを定めて害を加える人もいる。加害を隠すため、うそをつくのは加害者の方である。

 生きづらさを抱えながらも被害をなかったことにしたくないと、当事者たちはフラワーデモで語ってくださった。誰かに聴いてもらうことが回復へのプロセスなのだと思う。

 「女性はいくらでもうそをつけますから」と性被害者を蔑視し、デモで発言した被害者の一人一人の言葉をひとくくりにする杉田氏の発言の背景には、性暴力に関して無理解な性差別社会が広がっているようにみえて、怖くて身震いする。

 フラワーデモをきっかけに静かに耳を傾ける人が増え、性暴力を許さないという流れができた今だからこそ、この発言を見過ごすことはできない。「#With You」の気持ちで強く抗議する。

 (次回は12日掲載)