県内飲食店「早期開始を」 GoTo食事券事業 事前登録巡り混乱も


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 新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少した飲食店を支援する政府の「Go To イート」キャンペーン。オンライン予約のポイント付与は1日から全国で始まり、「プレミアム付き食事券」事業は県内でも11月ごろに始まる見通しだ。

■起爆剤

 食事券は国が飲食店の店内利用を支援するために、購入金額に25%を上乗せする。1万円で1万2500円分のプレミアム付き食事券が購入でき、加盟飲食店で利用できる。

 感染症で売り上げが落ちる中で、飲食店は事業に期待を寄せる。宮古島市平良の居酒屋は、8月の売り上げが前年同月比で8割近く減少した。忘年会需要の盛んになる年末も、感染拡大防止で座席を減らしているため例年通りに稼げるかは不透明だ。

 店主の男性は「閑散期の10~11月にできるだけ地元客を取り込んで収入をならしたい。事業が始まれば客が増えると思う」と期待する。

 沖縄は感染が拡大していたことなどから食事券事業の2次公募に回り、採択は10月1日になった。5日に新潟で食事券の販売が始まるなど全国で順次開始されているが、県内での事業開始は11月になると見込まれている。

 農水省によると、予算は都道府県ごとに配分されるため開始が遅れても金額が減ることはない。しかし感染の第3波を見越し、今のうちに売り上げを確保したい飲食店から早期開始を求める強い声が上がる。

■説明会なく

各席にアクリル板を設置し、感染対策を取る飲食店=9日、那覇市東町のヤンバルクイナ

 県飲食業生活衛生同業組合には、連日「いつ始まるのか」と問い合わせが相次いでいる。鈴木洋一理事長は「既に廃業する店舗も増え始めている。一日でも早く開始してほしいというのが飲食業界全体の願いだ」と求める。

 旅行喚起策「Go To トラベル」で、旅先で使える「地域共通クーポン」の利用も1日から始まったが、イート事業に登録していない飲食店では使えない。国の補助事業の間で感染対策に差が生じるのを防ぐためだが、周知不足から混乱も生じている。

 那覇市東町の居酒屋では、宿泊先で配られた地域共通クーポンを持った観光客が店を訪れるが、イート事業の申請が完了していないため使用できない。「なぜ使えないのか」と苦情を言われ、入店を取りやめる客もいた。

 実はイート事業のうち、「ぐるなび」「食べログ」などオンライン予約に登録すれば地域共通クーポンは使える。同店もこれまで電話予約のみだったが、急きょオンライン予約サイトに契約を申請した。店主の男性は「トラベル事務局に問い合わせても、沖縄ではまだ地域共通クーポンは使えないの一点張りだった。説明会も全然なく分かりづらい」と困惑する。

 農水省の担当者は「焦ってオンラインを契約せず、費用や店の業態に合っているかを見極めてほしい」と呼び掛ける。送客手数料が無料の業者もあることから、慎重な判断を求めている。しかし店主の男性は「客から文句を言われるのが怖い。トラブルに発展しそうな場合は、取りあえずクーポンを受けて差額分は自腹で払おうかと考えている」と苦しい現状を語った。

(沖田有吾、中村優希)