沖縄女性が長野で議員になったワケ 子育て世代の田中さん「おかしい」を原動力に


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
議会の多様性の重要性を強調する白馬村議の田中麻乃さん=9月、那覇市のブックカフェ&ホール「ゆかるひ」

 女性議員を増やし、女性たちが抱える課題を解決しようと活動する「パリテ・カフェ@信州」のメンバーで、長野県白馬村議員の田中麻乃さん(37)=那覇市出身=を招いたイベントが9月28日夜、那覇市内で開かれた。

 スノーリゾートとして有名な長野県白馬村。田中麻乃さん(旧姓・我如古)は、人口約9000人の同村の議員として日々、奔走している。同村には、2005年に夫の夢であるペンションを営むために移住。ペンションの経営とともに社会保険労務士として活動する中で、村が抱える問題に直面した。16年にまちづくり会社「白馬ギャロップ」を設立し代表取締役に就任、翌17年の村議会選挙で初当選した。田中さんは「私のような子育て世代が議会にいれば、若い世代がもっと政治に興味を持ってくれて、政治を身近なものにできるのではないかと思う」と笑顔で話す。

 田中さんは沖縄尚学高校卒業後、中央大学に進学。卒業し田辺製薬での勤務を経て09年に社労士に合格した。移住後見えてきたものは、繁忙期であるスノーシーズン以外の季節での村民の厳しい雇用環境だった。季節雇用が多く、子どもがいる家庭でも両親がバイトの掛け持ちで生計を立てていた。事業者でもシーズンオフは村外で仕事をせざるを得ない。

 通年雇用を実現するためにはどうすればいいのか。そう考えた田中さんはまちづくり会社を設立。宿泊と飲食に注目し、宿泊や飲食施設を借りたり購入したりして、時代に合うように改装、“おしゃれな白馬”のイメージを押し出した。しかし、会社を通して議会や行政とやりとりをする中で、「おかしい」と思うことが多くなってきた。それなら「自分が(議会の)中に入ってみよう」と、村議選に立候補したという。

 だが、田中さんには、日本で当選するのに必要な「地盤、看板、カバン(お金)」はなく、白馬村では各地区から推薦された人が議員になっていた。選挙運動のやり方も分からなかったが、SNSやユーチューブを通じて支持を訴えた。選挙活動期間は5日間、かけた費用は約10万円だったが、3番目に多い得票数で初当選を果たした。

 4年目を迎える今、地域のPTAとともに、子どもたちの通学の安全を守ろうとスクールバスの陳情書を提出するなど子育て世代の代表として活動する。田中さんは「村のことをみんなで考え、自分ごととして行政や議会に働き掛けられる人が一人でも多くなれば、村は必ず良くなる」と語る。柔らかな表情が一瞬、キリッとなった。