「沖縄愛」で募金活動 SNS通じ連携広がり 高校生の外間さん、知念さんら(2)<再建に描く未来・首里城焼失1年>


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外間愛夏さん(右から2人目)や知念幸都さん(同7人目)と共に首里城再建の街頭募金に取り組んだ「首里城を愛する高校生たちの会」のメンバー =2019年12月、那覇市の国際通り

 放課後、龍潭のほとりにあるベンチに腰掛け、2人は計画を練った。首里城が焼失した翌日の2019年11月1日夕。外間愛夏さん(県立浦添高校3年)と知念幸都さん(県立那覇国際高校3年)は共に那覇市立首里中学校出身だ。3連休を翌日に控え、再建資金を集めようと街頭募金に向けて話し合っていた。龍潭から見える、ライトアップされた首里城が大好きだった。慣れ親しんだ景色が、もう目の前にはなかった。

 首里城が焼失した日、外間さんは那覇市首里の自宅で早朝6時ごろに祖母に起こされ、火災を知った。まだ薄暗い空が赤に染まる様子を見てぼうぜんとし、ただ涙が流れた。

 登校のために乗ったモノレールでは、乗客たちが固唾(かたず)をのみ、煙が上がり続ける首里城を見詰めていた。帰宅の際、外間さんは道すがら「首里城祭は中止になりました」と掲示された張り紙を見掛けた。その写真を撮影し、会員制交流サイト(SNS)に投稿した。「募金活動しませんか」。知念さんが返信した。「やります」

 材料を買って募金箱を自作し、国際通りに立った。初日の主な参加者は外間さんと知念さんだったが、翌日には活動を知った同級生らが徐々に駆け付け、3連休で延べ20人以上が参加した。寄付の呼び掛けに応じた人たちから53万円が集まった。「首里城を愛する高校生たち」と名付けたメンバーは自発的に増えていった。

 11月7日にこの53万円を玉城デニー知事に届けた後も活動を続けた。SNSを通じて活動は広がり、沖縄市や宜野湾市などから駆け付けた高校生もいた。「初めまして」。言葉を交わして一緒に街頭に立った。結果的に70人ほどが参加し、19年末まで街頭募金を続け、最終的に計200万円以上が寄せられた。

 街頭募金をしていると、激励やねぎらいの言葉に加え、ジュースや昼食を手渡してくれる県民に多く出会った。同じ人が毎週寄付を投じることもあった。「首里城は琉球の魂だ。世界で再建させよう」と台湾人観光客も熱く語っていた。

 外間さんはこれまでもボランティア活動で募金に携わってきたが、首里城を巡る募金活動では過去にないほど、激励の言葉が寄せられ「沖縄愛を感じた」という。1年前の活動初日、国際通りでの第一声は緊張したが、「一歩踏み出す勇気を知った。首里城焼失は悲しいけれど、同じ思いの仲間が集まって協力できてうれしかった」。

 海外への進学を予定している知念さんは故郷への思いが強まった。「今、沖縄の街の風景は本土と似ている。けれど、首里城を見ると沖縄独特の歴史や文化、アイデンティティーを感じた。だからこそ首里城再建に意味がある。世界を見た後、将来は沖縄に戻り、沖縄のためになることがしたい」。大好きだった景色が高校生たちを前に歩ませる。 (島袋良太)