米大統領選挙で日米関係はどう変わる? 山本章子琉球大准教授に聞く


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 安倍晋三・菅義偉両政権は一貫してトランプ再選を期待する言動を取ってきたが、実のところ次の米大統領がどちらでも日米関係に大きな影響はないだろう。ジョー・バイデン新政権になったとしても、基本的な対中政策はドナルド・トランプ政権から変わらないからだ。

 6月18日に権威ある米外交雑誌「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された、バイデン新政権の国防長官候補ミシェル・フロノイ氏が書いた「いかにアジアで戦争を防ぐか」と題した論文を読めば分かる。

 フロノイ氏は、南シナ海や台湾に対する中国の侵略的行動を阻止するために、米国がどのような軍事的関与や軍拡を行い、同盟国との協力態勢を執るべきか説いている。トランプ政権同様、中国が膨張主義志向であることが対中政策の前提となっているのだ。

 あえて言えば、支持者に分かりやすくアピールできる成果を好むトランプ氏が再選すれば、同盟国日本に求めるのは在日米軍駐留経費の日本側負担の大幅増額だろう。それに対してバイデン新政権になれば、経費よりも自衛隊の軍事的役割の増大を求められる可能性が高い。

 いずれにしても、米軍基地の削減を求めてきた沖縄を取り巻く状況は非常に厳しくなっていると言わざるを得ない。オバマ前政権は、中国のミサイル能力の向上に対応して沖縄に集中している米海兵隊をグアム、ハワイ、オーストラリアなどに分散させる計画を決定した。

 しかし、中国がグアム島まで届くミサイル能力を獲得したことから、トランプ政権下ではむしろ、ミサイルの撃ち合い、すなわち全面戦争にならないよう米中の軍事衝突をコントロールしながら、中国が同盟国の領土を占領するのを阻止すべく、先んじて中国周辺の軍事的拠点を米軍が押さえる戦略に変わる。この発想の下では、尖閣有事や台湾有事には沖縄一帯は最も重要な軍事的拠点となる。

 沖縄に住む我々は、米大統領選の結果に一喜一憂するのではなく、誰が大統領になっても軍事的緊張が増すばかりの米中対立と、それを抑えるどころか歓迎して日米の軍事的一体化を進めようとする日本政府を懸念すべき立場にある。米中の軍事衝突で戦場になるのは沖縄だからだ。
(山本章子、琉球大准教授)