[日曜の風・香山リカ氏]世界のうねり 沖縄の民意いまこそ


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 世界のあちこちで「民意」の声が高らかに響いている。日本では、大阪都構想の住民投票が行われて否決された。「都構想」とはいってもすぐに「大阪都」が誕生するわけではないということに気づいた市民たちが、「大阪市が廃止されるだけ。大阪市を守ろう」と草の根で活動し、圧倒的な資金力や人的パワーを持つ維新と公明の“政党タッグ”を打ち負かしたのだ。

 そしてアメリカでは、4年続いたトランプ政権が終わりを迎えようとしている。結果が出るまでに時間はかかっているが、民主党のバイデン候補が大統領選を制しようとしているのだ。自国第一主義を唱え、メキシコとのあいだに壁を建設するなど排外主義をあらわにしたトランプ大統領に、アメリカの民意が「ノー」を突きつけた形だ。

 そんな中、日本のあちこちから「いや、待てよ。沖縄の民意はどうなった?」という声が聞こえてくる。知事選などの選挙や住民投票で何度も「辺野古新基地建設は反対」と民意をあらわしては、それが踏みにじられてきた沖縄。おそらく県内では「自分たちのところは大阪やアメリカのようにはいかないんだ」と失望する人もいるかもしれないが、それは違う。むしろ世界でこうして人びとの小さな声が大きなうねりになっているいまこそ、「沖縄だけ置いてきぼりはひどいじゃないか。沖縄こそ先に民意を示していたじゃないか」という声に耳を傾ける人も増えているはずなのだ。

 この何年か、世界でそして日本で、「強いもの、富めるものがますます力をつける」「弱いものの声は無視する」という政治が行われ、社会の格差は広がり、分断が深まった。しかしいま、ギリギリのところで人びとが「そんなのおかしい!」と気づき、それが結果につながりつつあるのだ。

 この流れに沖縄も乗ろう、いや沖縄こそ先頭に立つ資格がある。アメリカとの対話もきっとこれからはしやすくなると思う。もちろん全力で応援します。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)