<記者解説>「止血」から中長期展開へ 沖縄県がコロナ経済対策方針を改定


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 9日に改定された県の「経済対策基本方針」は、5月の策定時から全面的に書き換えられ、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じた対策方針が打ち出された。倒産や解雇といった企業・雇用のダメージを最小限に食い止めるための超短期的な「止血」を施策の主軸としてきたが、改定によって中長期的な施策展開に踏み出した。

 2020年度下半期に入り、トヨタ自動車が21年3月期業績見通しを上方修正するなど、コロナ禍にありながらも、国内製造業は回復する兆しがみられる。しかし、製造産業が弱く、観光業が基幹となっている県経済は事情が異なり、観光を中心にコロナ前の水準に戻るには一層の時間がかかるとみられる。

 県は治療法の確立や安定的なワクチンの開発・供給開始まで、感染拡大と終息の波が繰り返す可能性があると想定する。コロナ後の「成長期・出口戦略」としてデジタル化を推進しつつ、大手と中小・零細で企業間格差が広がらないよう事業者をフォローする人材育成も検討している。デジタル化推進など、改定された基本方針の柱は、21年度当初予算や次期沖縄振興計画に盛り込むことも念頭にしている。

 方針の改定について、県幹部は「経済界と協働していくことを重視した」と語る。10月には経済団体を招いた「経済対策関係団体会議」の初会合を開き、経済界からの意見を聞き取った。県によると、策定までに約130件の意見が寄せられ、改定案にも意見を一部盛り込んだ。

 経済対策の理念や方向性を示した基本方針の真価は、今後策定される具体的な事業や対策の中身によって問われる。県は今後も関係団体会議を通して経済界の意見を聞く考えで、協働によって同方針に掲げた「重層的な対策」を作り出せるのかが注目される。
 (池田哲平)