バイデン氏、PFASの規制強化を公約に明記 在沖米軍基地への影響は不透明


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 米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領が選挙中に掲げた公約で、発がん性などのリスクが指摘される有機フッ素化合物(PFAS)について、米国で規制を強化すると明記している。PFASを巡っては在沖米軍基地周辺での汚染が2016年に表面化し、基地内を含む浄化を求める声が上がっており、米本国での動きが基地を抱える沖縄にどう影響するかが注目されそうだ。

 バイデン氏は選挙中に掲げた環境政策でPFAS問題に言及。汚染責任者が費用を負担する浄化などを定めた米スーパーファンド法で規制対象となる「有害物質」に指定するとした。また現在は米環境保護庁(EPA)が水道水中のPFOS・PFOA濃度に「生涯健康勧告値」を定めているが、強制力のある上限値に切り替えるとしている。

 米環境NPO「エンバイロメンタル・ワーキング・グループ」のスコット・フェーバー氏(ジョージタウン大非常勤教授)は「これまでの大統領候補で、最も環境問題を前進させる公約を掲げた。とりわけPFAS汚染問題だ」と評する。

 PFASと総称される有機フッ素化合物は数千種に上るが、バイデン氏が規制を強化するのは特に毒性が強いPFOSとPFOAになる見通しが報道されている。PFOSの代替物質として登場し、後に毒性が明らかになってきたPFHxSなどが対象から漏れる場合は規制の「不足」が指摘されることは想定される。

在日米軍には穴

 米本国でのPFAS規制強化が在日米軍の行動にも何らかの影響を及ぼす可能性も考えられる。だが、先行きは不透明だ。

 まず米本国で検討されている規制強化は水道水中の濃度だが、沖縄では水道水の管理者は県企業局となっており、米軍はその意味で当事者ではない。

 また米本国でPFASを「有害物質」に指定した場合、米国内では原因者が汚染を除去する義務がより明確になる。しかし在日米軍は日米地位協定で日本国内の法規制が適用されない。

 さらに汚染源が米軍基地だと立証されなければ、日本側が因果関係を後ろ盾に米軍に汚染除去を求めることに及び腰である状況が続くことが予想される。実際、県内7市町村に給水する北谷浄水場の水源は、米軍嘉手納基地が流出源とみられるPFOSやPFOAで汚染されていることが問題となっている。だが米軍は日本側の立ち入り調査を拒否し、汚染源の特定と汚染除去ができていない。

 一方、在日米軍による環境保全については、日本環境管理基準(JEGS)に従って日米の環境基準のうち厳格なものを選択することが定められている。米側でPFAS規制が進めば、在日米軍も本来的には国内での汚染対策の強化が求められる。ただ、JEGSを実際にどう運用しているかを米側は公表していない。

本国規制どう活用

 「永遠の化学物質」とも言われるPFASは自然環境中でほとんど分解されないため、問題解決には汚染源の除去が不可欠だ。だが県企業局は北谷浄水場の浄水施設に活性炭を設置し、原水中のPFOSやPFOA濃度を低減する“対症療法”を取っているのが現状。汚染源は放置されたままだ。

 環境調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表は「連邦政府レベルでは進まなかったPFAS政策を推進する政権が生まれる。県はその動向を先行して把握し、日米政府への交渉や対策に戦略を練るべきだ」と指摘。「私たちも米国の団体と連携して議会への書簡を出すなど訴えてきたが、活動を強めていく。知事も米軍に起因するPFAS被害や要望を訴える首長として、強い公的な意思表示を示していくことが必要だ」と沖縄側での対応強化を求めた。

(島袋良太)