【独占インタビュー】駐日ロシア大使ミハイル・ガルージン氏 沖縄とロシアの交流が日ロ関係に貢献


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インタビューに答えるミハイル・ガルージン駐日ロシア大使=10日、那覇市泉崎の琉球新報社

 9日~11日の日程で初来沖した駐日ロシア大使のミハイル・ガルージン氏が、琉球新報社のインタビューに応じた。ガルージン大使は芸能や空手を通し、ロシア国内で沖縄は認知されているとした上で、県とロシア南部のロストフ州との協力覚書について「締結されると、日ロの地域間交流や日ロ関係全体に大きく貢献する」との認識を示した。

 ―ロシア国内での沖縄の認知度はどうか。

 「沖縄は日本の最西南の地域で、鮮やかな色彩、独特な文化と芸術を持つ地域として知られている。2000年の沖縄サミットで、プーチン大統領が県民と触れあい、柔道のけいこで中学生を投げ、投げられたことが報じられたことが大きい。その前年、サミット開催地・沖縄の文化を紹介する催事がモスクワであり、沖縄の舞踊団が公演した芸術座は満席の市民が温かく歓迎し、私も素晴らしい芸能を鑑賞した。また、空手の発祥の地として知られ、18年11月に『ロシア武道代表団交流演武沖縄大会』が開かれた際、ロシアの副首相が団長を務める代表団が参加した。ロシア国内で沖縄は温かいまなざしで受け入れられている」

 ―沖縄のソフトパワーをどう見ているか。

 「海、森、山、青空と、言葉で言い尽くせないほどの美しい自然があり、ビーチリゾートも多い。独特な芸術、建築、芸能などの文化に触れる機会が増えれば、ロシア国民は喜ぶはずだ。県民の心も温かく、沖縄には素晴らしいソフトパワーがある。歴史的にも東南アジア、中国、朝鮮半島をつなぐ位置にあり、お互いを豊かにする文化交差点として大きな魅力がある」

 ―沖縄戦で4人に1人の県民が犠牲になり、ロシアは対独戦争で多大な犠牲を払った。沖縄が不戦の思いが強い土地柄と感じたか。

 「県平和祈念資料館は県民の平和を希求する思いが込められていると感じた。ロシアも第2次世界大戦でナチス・ドイツと同盟国に侵略され、2700万人の命がささげられた。ロシア国民は平和の尊さを深く認識している。(第2次大戦後の)75年間、国連を中心に大戦を防ぐことに成功した。妥協は難しくても国連の場で議論を尽くし、受け入れ可能な解決策を見つけ出し、(国連主導で)平和を守らなければならない」

 ―ロストフ州と県との交流が拡充される方向にある。ロシアとの交流強化に向け、沖縄側に何が求められるか。

 「新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日ロ両政府は『日ロ地域交流年』の行事を2021年に延期したが、沖縄県とロストフ州との協力覚書締結は時宜を得たもので、日ロの地域間交流や日ロ関係全体に大きく貢献する。近年の日本は外国人観光客が大幅に増え、上質なサービスを提供してきた。ロシア語の通訳養成や街路表示、観光パンフレット作成など、外国人観光客を迎える日本の豊かな経験を沖縄が継承し、発展させると確信している」

 ―広大な在沖米軍基地をどう受け止めているか。

 「日本をどう防衛するかは、主権国家である日本政府が決める事項で、ロシアとしてコメントする立場にない。日本にとって最も緊密で最大の同盟国である米国の、最近の対ロ政策は特に敵対的になっている。米国は戦略的安全保障を支えてきたほとんどの米ロ条約から脱退し、軍拡競争を宇宙やサイバースペースに拡大している。いかなる場所に配備されている米国のいかなる軍隊も、ロシアにとって非友好的な存在だ」
 (聞き手 編集局長・松元剛)
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 ガルージン大使は9日の琉球フォーラムで講演した内容について、本紙が10日付で報じた記事中、「米国をはじめとした欧米諸国が世界の連帯を阻み、新型コロナウイルスの感染を増長させていると主張」という表現に対し「正確ではない」と指摘した。正確には「コロナによる経済の停滞や鈍化、重症者の増加、医療体制の逼迫(ひっぱく)に、いろんな国が悩んでいるのに、欧米諸国が国連安保理の頭越しにした制裁がそのまま維持されている。それが一般国民に打撃を与えている。コロナ危機の有効的な対策とは言えない」とした。