「ごまちゃんがいてくれるだけで幸せ」 羽化不全のチョウを飼育する親子 家族のように愛情注ぐ


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「ごまちゃん」を育てている比嘉美由紀さん(中央)、プレゼントした久高将一さん(右)、友人の大田哲さん=5日、那覇市の繁多川公民館

 羽化した際に羽の一部が伸びなかった羽化不全のオオゴマダラを、沖縄県那覇市在住の比嘉美由紀さん(48)、文乃(あやの)さん(24)親子が愛情を注いで育てている。通常の個体のようには飛べないため、ハチミツやスポーツ飲料などを混ぜて餌を作り、スポイトで飲ませている。美由紀さんは「命ある限り大切に育てたい。長生きしてほしい」と話す。

 比嘉さん親子は友人の大田哲(さとし)さん(60)を介し、自宅のチョウ園でオオゴマダラを育てている久高将一(しょういち)さん(82)=那覇市=から10月に黄金のさなぎ2匹を譲り受けた。約1週間後に羽化した。1匹は大空へ羽ばたいたが、もう1匹は完全に羽が伸びずに飛ぶことができなかった。

スポイトから餌を吸うオオゴマダラのごまちゃん

 2人は、大空を飛ぶことがかなわなかったオオゴマダラを「ごまちゃん」と名付けて育て始めた。「ごまちゃん、おはよう」「おやすみ」などと声を掛けると、ごまちゃんは顔を2人の方へ向けたり羽をパタパタさせたりして反応するという。手のひらに載せると2~3メートルは飛べるようになった。今では家族同然だ。

 さなぎの頃から毎日写真や動画を撮って記録している美由紀さんは「命の大切さを感じた。ごまちゃんがいてくれるだけで幸せ。『元気でいてくれてありがとう』という思いだ」と語った。

 「首里城下にチョウを翔ばそう会」の大城安弘会長によると、一般的なオオゴマダラの寿命は2~3カ月。生命力が強いオオゴマダラは6~7カ月生きるという。羽化不全だと長く生きられない個体もあるが、ごまちゃんは2カ月以上生き続けている。さなぎをプレゼントした久高さんは「愛情を注いでいるから長生きしている。1日でも長く生きてほしい」と話した。
 (中川廣江通信員)