琉球新報短編小説賞、佳作に北原さん、とくもとさん 正賞は該当なし 


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 第48回琉球新報短編小説賞の最終選考会がこのほど、那覇市内で開かれ、佳作に北原岳さん(本名・柳井貴士)(45)=南風原町、大学講師=の「ゴーストツアー」と、K・とくもとさん(本名・上門慶子)(69)=西原町、無職=の「夏至南風(カーチーベー)の吹く頃に」の2作品が選ばれた。正賞の該当作はなかった。

 応募作29編を予備選考で5編に絞り、芥川賞作家の又吉栄喜、文芸評論家の湯川豊、元琉球大教授で詩人・作家の大城貞俊の3氏が最終選考に当たった。

 「ゴーストツアー」は、米海兵隊として沖縄に派遣された県系4世のルーツを巡る葛藤や戦争の暴力性を描いた。「文体の軽さがかえって(青年の)体験の重さを感じさせ興味深かった」(湯川氏)などの意見が出た。

 「夏至南風の吹く頃に」は、家族の死を受け入れ、再出発する中年男性の姿を描いた。選考では「家族がそれぞれの物語を抱えていることを浮かび上がらせている」(大城氏)、「一貫して読ませる。風景描写に細かさがあった」(又吉氏)などの指摘があった。

 北原さんは「外からの眼を強みに沖縄を描き続けたい」、K・とくもとさんは「亡くなった、作家の長堂英吉先生にささげるつもりで書き上げた」と語った。 贈呈式は来年2月6日午後1時、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開かれる。