【記者解説】2021年度沖縄関係予算、強まる政府「基地リンク」


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 政府が21日に決定した2021年度沖縄関係予算案は、20年度当初予算と同額の3010億円となった。4年連続の同額で、安倍晋三前首相が21年度までの期限付きで約束した「3千億円台」をぎりぎり確保した形だ。ただ、「国直轄」の事業が増加する半面、県に使途の裁量が委ねられる沖縄一括交付金が1千億円台を割り込むなど、「自立的発展」を目指す県にとって厳しい内容だ。防衛省予算に名護市辺野古の新基地建設に伴う地盤改良費用を盛り込むなど、沖縄振興と基地問題をリンクさせる動きも顕在化している。(安里洋輔)

 21年度の沖縄関係予算は、4年連続同額という異例の決着を迎えた。沖縄科学技術大学院大学(OIST)など、政府主導の「箱物」事業の多くが予算規模の縮小を免れた一方、冷遇ぶりが際だったのが、県に予算執行の主導権がある一括交付金だ。

 20年度当初予算から33億円減で、12年の創設以来保たれてきた1千億円台を割り込んだ。一方、30億円台という減額幅は、一括交付金のソフト交付金を補完する名目で創設された、国直轄の沖縄振興特定事業推進費の増額分にそっくり当てはまる。内閣府は「交付金が減って代わりに増えたということはない」と関連を否定する。しかし、それぞれの増減の理由と基準を示しておらず、沖縄振興の主導的立場を県から国に移行したとの印象は拭えない。

 来年度から始まる新たな沖振計に向けて不安の残る予算編成となった一方で、名護市辺野古の新基地建設で防衛省は地盤改良のために約214億円を計上した。軟弱地盤は、沖縄防衛局が提出した設計変更申請を県が認めなければ着工できず、県の判断が焦点となる。

 来年度は現行の沖縄振興特別措置法の最終年度に当たり、見直しに向けた議論が活発になる時期とも重なる。県が設計変更申請を拒否すれば、次期振興策を見直すことも可能だという切り札を政府は手にしたことになる。「基地ありき」の沖縄振興を進めようとする政府の思惑が透ける。