【識者談話】ずさんな基地運用 飛行差し止めで抜本的改善を 高作正博氏(関西大教授)


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高作正博氏(関西大教授)

 第3次普天間爆音訴訟が提起された。何度も同じ趣旨の訴訟が繰り返されるのは、米軍機による騒音の違法性が裁判で認定されながらも、国が長年、その違法状態を放置してきたからだ。

 米軍は、早朝・夜間の訓練を制限する騒音規制措置(騒音防止協定)すら順守していない。日本政府も米軍のずさんな基地運用を認識しながら、抜本的な対策を取らずにきた。その結果、過去最高の4千人余りが原告に名を連ね、子育て世代の住民も新規参加することになった。

 これまで普天間飛行場や嘉手納基地、厚木、横田など多くの基地騒音訴訟で、米軍機による騒音の違法性や国の賠償責任が認められてきた。しかし飛行は差し止められていない。米軍基地の運用は日本政府の支配が及ばないとする「第三者行為論」で、原告の訴えが退けられてきたからだ。

 米軍基地の維持は、住民に対し長期的な受忍を強いることで可能となる。住民の生命や健康よりも、米軍の利益を優先させてきた政府の態度には多くの問題点がある。損害賠償では被害は軽減されない。残る方法は飛行差し止めしかない。司法には事態の抜本的改善に向けた判断がこれまで以上に求められている。毅然(きぜん)とした態度を示してほしい。(憲法学)