【識者談話】障がい者就労支援、コロナ禍で浮き彫りになった事業構造の課題とは


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島村聡・沖縄大教授

 調査から見える大きな課題は、障がい者の就労支援の事業形態を下請けや受託事業が占めていることだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、親企業が影響を受けると事業所も同様に打撃を受ける。農業や官公需など行政からの事業を請け負う事業所には影響が少なかった。

 感染への不安から利用者が出勤を控え、休みが続くと収入確保が困難なため、職員が代わりに生産活動を担うケースがある。本来は利用者が仕事を覚える場だが、職員の努力によって工賃を維持する本末転倒な現状だ。以前から指摘のあった、就労継続支援事業所の構造的な問題がコロナにより改めて明らかになった。

 収入が減る中で、利用者と雇用契約を結ぶA型事業所は雇用調整助成金を申請できるが、契約を結ばないB型事業所は助成金の支給対象にならないという差があった。しかし、より多くの収入が要求されるA型が、消極的な理由でB型に転換する例も全国的に増えており、行政による適切なカバーは必要だ。

 県内には小規模事業所も多く、お互いの活動を補い合う企画や情報交換の機会も重要になる。障がい者が働くこと自体に意味がある。行政の支援が必要であると同時に、障がい者の立場に立つ事業所側の覚悟も問われている。
 (社会福祉)