八重山への海自配備「具体計画なし」 岸防衛相 安保環境変化で含みも 


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠
インタビューに答える岸信夫防衛相

 岸信夫防衛相は1日までに琉球新報などのインタビューに応じた。八重山諸島への海上自衛隊配備を求める動きがあることについて岸氏は「現時点で海上自衛隊、航空自衛隊において、宮古島や石垣島に新たな基地などを整備する具体的な計画はない」と述べた。一方で南西諸島を取り巻く安全保障環境の変化に触れ「わが国や国民の平和な暮らしをしっかり守るという大きな目標に即して、しっかり考えていかなければいけない」と含みをもたせた。(知念征尚)

 Q:SACO(日米特別行動委員会)合意から25年を迎える。普天間飛行場の移設と沖縄の基地負担軽減にどう取り組むか。
 A:「沖縄は戦後70年以上たった今も大きな基地負担を負っている。この現状は到底是認できるものではない。沖縄の基地負担軽減のため、できることは全て行う、目に見える形で実現するという強い気持ちで取り組んできた。現政権においても、基地負担軽減が最重要課題であることは変わらず、引き続き取り組む」

 「移設問題の原点は、住宅や学校等々に囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の危険性を1日も早く除去することだ。普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければいけない。これは政府も地元の皆さんも共通認識だと思う。日米同盟の抑止力維持と、普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせると、辺野古移設が唯一の解決策だ。この方針に基づいて着実に工事を進めることが、1日も早い全面返還を果たし危険性の除去につながる。引き続き普天間飛行場の危険性除去と、辺野古移設に関する考え方、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現する
という取り組みについて丁寧に説明し、地元の皆様の理解と協力を得られるように粘り強く取り組む」

 Q:名護市辺野古の新基地建設に伴う大浦湾側の設計変更申請について、県は不承認とする可能性が高いとの見方がある。どう対応するか。
 A:「設計の変更承認申請書は、沖縄防衛局において技術検討会や環境監視等委員会で有識者の助言を得つつ、十分な検討を行ったものだ。沖縄県においても適切に対応していただけると考えている」

 Q:軟弱地盤を巡り、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は11月に出した報告書で「完成する可能性が低そうだ」と基地建設完了を困難視した。自民党内からもさまざまな見直し論が出てきている。計画を見直す必要性は。
 A:「CSISや自民党の各議員のさまざまなコメントもあるが、一つ一つにコメントすることは差し控える。日米同盟の抑止力の維持、普天間の危険性の除去、こういったことを考え合わせた時に、辺野古移設が唯一の解決策という考え方は、米国政府との間で累次にわたり確認してきた。防衛局が検討した工事内容は政府として米側にも説明し、確認をしてきている」

 Q:政府はオスプレイ訓練の県外移転などの負担軽減策を進めてきたが、普天間飛行場では外来機の飛行が増加した。対応を見直す必要性は。
 A:「普天間飛行場の航空機騒音は、住民の皆さんにとっても大変深刻な問題だ。私も地元に岩国飛行場があり、基地周辺の騒音にも日々接し、よく理解する。その軽減を図ることはわれわれにとって重要な課題だ。普天間飛行場に外来機が飛来していることを、防衛省も確認している。米軍に対し、騒音規制措置の順守や、地元の重要な行事に配慮してもらう申し入れを行う。普天間飛行場のオスプレイの訓練移転等を着実に進め、住宅の防音工事など地域社会との調和にかかる各種施策を通じ、周辺住民の負担を可能な限り軽減できるよう努める。さらに(辺野古移設の)工事を着実に進め、普天間飛行場の返還、危険性の除去をできるだけ早期に実現したい」

 「米軍の運用などにあたっては、公共の安全に妥当な配慮を払うということは当然のことだ。防衛省として航空機の運用による影響を最小限に食い止めるよう、引き続き米側に求めていく」

 「騒音問題でよく言われるのは、せっかく(オスプレイ訓練などを)県外に移転しても外来機が来てるんじゃないか、という話だ。米軍の運用に関わることであり予断を持って答えるのは差し控えるが、一般論で申し上げれば、在日米軍は時々の安全保障の環境に応じて、日米安保の目標達成のため航空機の飛来をはじめとする必要な運用と訓練を実施している」

 Q:米軍那覇港湾施設(那覇軍港)について。沖縄県は施設が遊休化しているとして先行返還に言及している。先行返還が難しいと考える理由は何か。
 A:「那覇港湾施設は平素から実際に使用されており、遊休化していない。(遊休化という)前提に欠けていると思う。事態が緊迫した際の使用も当然に想定される。平素の運用、使用状況のみから施設の要否を判断することは適切でない。その上で、港湾施設は2013年4月の統合計画で、浦添ふ頭地区に建設される代替施設に移設した後に返還されることになっている。この返還条件を満たすように進めることが、返還の実現に向けた一番の早道だ」

 Q:八重山防衛協会が10月、防衛省に八重山地方への海上自衛隊配備を要請した。現在、先島地方では陸上自衛隊の基地整備が進むが、新たな部隊配備の必要性をどう考えているか。
 A:「南西地域は全体で1200キロという広大な地域だ。2016年3月に与那国島の駐屯地が開設されるまで、沖縄本島以外では陸上自衛隊の部隊が配備されていなかった。南西地域の陸自部隊の空白を解消すべく、19年3月に奄美大島に奄美駐屯地、および瀬戸内分屯地、宮古島に宮古島駐屯地を開設し、普通科を中心として、警備部隊、中距離地対空誘導弾部隊、地対空誘導弾部隊等の配備を進めてきた。引き続き石垣島への陸自部隊の配備を進めており、今中期防の期間中(2023年度まで)に配備が実現できるように取り組んでいる」

 「地元では部隊配備についてさまざまな意見があると承知しているが、現時点で海上自衛隊、航空自衛隊において、宮古島や石垣島に新たな基地などを整備する具体的な計画はない。南西地域への部隊配備は力による現状変更を許容しないという、わが国の意思でもある。島しょ部への攻撃に対する抑止力や、対処力を高めるものであり、引き続き地元の皆様からのご理解ご協力を得られるように丁寧に説明していく」

 Q:海自や空自を島しょ地域に配備する計画は、今後の状況によってはあり得るか。
 A:「仮定の質問であり、答えは差し控えたいと思うが、南西地域を巡る安全保障環境は非常に厳しくなっている。そうしたところに対してわが国や国民の平和な暮らしをしっかり守るという大きな目標に即して、しっかり考えていかなければいけないことだ」