我部名誉教授「米軍、復帰控え国際社会を意識」 毒ガス移送の道路建設費負担を検討


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1971年2月12日付でランパート高等弁務官が米国務省などに宛てた公電。第2次移送にかかる道路建設費用を日本政府が負担しない場合、米国民政府の一般資金から捻出することを提案している

 1971年2月12日付でランパート高等弁務官が米国務省などに宛てた公電には、米側が毒ガスの2次移送で必要な道路建設費を日本政府に求める方針を示す一方、それが拒否された場合に備え、水面下で米国民政府の一般資金を活用して全額拠出することを検討していた。我部政明琉球大名誉教授は、国際的に使用が禁じられていた毒ガス兵器を巡り「米軍は国際社会からの厳しい視線を懸念していた」と指摘した。米側が負担してでも、沖縄返還協定の締結前に撤去作業に着手したい意思があったはずだと分析する。

 これまで公開された外交文書によると、米側の思惑とは別に日本政府も道路建設費の全額負担を決めたが、屋良朝苗主席の要請を受けた上で決定したかのように装い、日本が琉球政府を全面支援しているとの印象を演出していたことも分かっている。

 我部氏は日米沖のパワーバランスについて「米軍が沖縄の基地を自由に使い、それを日本政府が巧妙に支援している構図は現在も同じだ」と指摘した。

 沖縄の戦後政治史に詳しい茨城大学の小松寛研究員は、毒ガス移送と現在の辺野古新基地建設問題に触れ、「日本は米軍に安全保障を依存している以上、良好な日米関係を堅持するため、お金で解決できるものはしたいと考えているはずだ」と指摘した。