宿泊キャンセル数百件…プロ野球キャンプ無観客の影響大きく 


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昨年の春季キャンプ歓迎イベントに集まった県内外のファンら。感染防止でマスクを着用していた=2020年2月7日、宜野湾市のラグナガーデンホテル

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う県独自の緊急事態宣言を受け、2月1日から県内各地で始まるプロ野球の春季キャンプは、無観客で実施されることが決まった。県内観光事業者にとって、キャンプによる観光需要は冬場の閑散期の柱だった。受け入れ体制を整えていた県内ホテルには宿泊キャンセルが相次ぎ、球団関係者の感染対策にも神経をとがらせている。

“メッカ”の地 維持へ正念場

 プロ野球キャンプで県内を訪れるのは9球団。2軍やファーム選手が帯同している球団もあり、県内十数カ所のホテルを利用することが決まっている。

 予約7~8割減

 選手など球団関係者が利用予定のホテルによると、県外から訪れるファンは選手が宿泊するホテルや、その周辺のホテルに泊まる傾向があるという。ある球団を受け入れるホテルには、県が緊急事態宣言を発出した19日以降、2月の宿泊予約のキャンセルは数百件を数える。担当者は「これからもキャンセルは増えていくと思う。例年、野球ファンの予約が圧倒的に多いので、無観客になった影響は大きい」と語った。

 別のホテルも、緊急事態宣言の前から予約のキャンセルが寄せられており、2月の予約は例年比で7~8割減となった。

 感染対策の苦悩

 宿泊施設側が細心の注意を払うのが感染対策だ。

 あるホテルは、感染拡大による宿泊客の減少を受けて従業員を休ませており、例年より少ない人数で球団を受け入れつつ、感染防止の対策を実施していく。担当者は「休業している従業員も多いが、感染対策の確保には人数もかかる」と警戒を強めており、「従業員はキャンプが終わるまで、家族や同居人以外と会うことは避けてもらう」など対策の徹底を図る。

 別のホテルでは例年、選手がホテルの出入りをする時間帯に「出待ち」のファンが大勢詰め掛けていた。このホテルは「観光客は減っているものの、どれほどの人が来るのか分からない。3密対策をどう進めていくのか球団と話し合いたい」と語った。

 目標は「継続」

 りゅうぎん総合研究所の調査によると、感染症の影響がなかった2019年は、プロ野球春季キャンプの期間中に県民や観光客などが宿泊や飲食、レジャーで消費した直接支出額は92億8千万円だった。そのうち、県外からの観客による支出が84%を占め、球団関係者は11%、県内客は5%と分析している。

 無観客となった影響について、同研究所の及川洋平研究員は「県外からの観客はキャンプが実施される全期間で大きく減少する見込みで、例年に比べると経済効果は小さくなる」と指摘する。その上で「今回は『今後も継続して実施すること』に重きを置いた対応が求められる。そのためにも、コロナ対策を最優先に取り組むことが重要だ」と強調した。

 沖縄がキャンプの中心地の地位を保つには、感染症対策を巡って練習・宿泊環境に混乱を生じさせることなく、選手の強化という目的を遂行できるかどうかにかかっている。

  (池田哲平)