【深掘り】米軍が慶良間低空飛行 政府 米追従で県民軽視


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田中利則沖縄防衛局長(中央)に抗議文を手渡す謝花喜一郎副知事(右)。左は橋本尚文外務省沖縄担当大使=20日午後、県庁

 慶良間諸島で米軍機の低空飛行が相次いで目撃された問題は、いびつな日米関係と、そのしわ寄せが沖縄に集中する現状を改めて浮き彫りにした。対応を巡って、日本政府と米軍との「温度差」を指摘する声が県関係者から漏れる。

 米軍機の低空飛行は昨年12月と今年1月に相次いで目撃された。事態を重く見た県は、在沖日本政府機関のトップを県庁に呼び出して抗議した。米軍への抗議は調整が付いていない。

 区域外訓練でも容認

 今回の飛行を巡っては「二つの問題が重なっている」(謝花喜一郎副知事)。一つ目の問題は提供施設・区域外での飛行訓練だということだ。日本政府は実弾射撃訓練などを除けば区域外での訓練は可能だとの認識だ。岸信夫防衛相が記者会見で慶良間諸島は訓練区域外だとしながら低空飛行訓練を認める発言をし、岸氏自身が所属する自民党の県議たちからも反発の声が上がった。

 低空飛行問題を受けて臨時で開かれた県議会米軍基地関係特別委員会で小渡良太郎氏は「想像力の欠如だ」、仲村家治氏(ともに自民)は「訓練空域を指定しているのに、そこで訓練しないなら空域を返してと言った方がいい」などと指摘した。

 外務省の資料や政府の答弁書などを見ると、日本政府も1980年代までは区域外での訓練はあくまで限定的な場合にとどめるべきだという考え方を持っていたことが分かる。現在の政府がいかに米軍を追認する姿勢であるかが分かる。

 高度も国内法適用外

 もう一つは飛行高度の問題だ。航空法は最低高度を何もない場所で海面などから150メートル、市街地などでは300メートルと定めており、民間機などがこれを下回る高さで飛べば違法となる。だが、米軍は日米地位協定で航空法の適用除外を受けている。実際、展望台から撮影した低空で飛行する動画には、撮影者から見てほぼ真横に米軍機が見え「海抜約44メートル」と書かれた標識も映っている。

 日本政府は、99年に公表した日米合同委員会の合意で日本の国内法と同じ基準を使うことを定めており、米軍に順守を求めていると強調するが、実効性には疑問符が付く。外務省沖縄事務所によると、緊急時などは例外となる。「緊急時」に一部の訓練も含まれる可能性を否定しなかった。

 22日、国政野党議員でつくる「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の聞き取りに対し、防衛省担当者は「航空機が高度何メートルを飛んでいるのか、下から図る方法は今のところ発見していない」と説明した。米軍からの情報提供もないとみられ、防衛省は有識者に相談するなどして高度を確かめる方法を模索している。

 ただ、そもそも日本政府は米軍の訓練を把握しきれていない。田中利則沖縄防衛局長は県議団から抗議を受けた際、「こうした訓練について慶良間諸島で実施されていることは初めて承知したところだ」と明らかにした。本紙の取材によると、少なくとも数年以上前から住民が目撃している。

 米軍が順守しているかどうか確認するすべを日本政府は現時点で持ち合わせていない。

(明真南斗)