アルゼンチン在住68年、下条善徳さん100歳「バーチャル表彰」喜ぶ 今もタブレット愛用


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
100歳高齢者表彰の祝い状を受け取った下条善徳さん

 日本政府による100歳以上の邦人高齢者表彰で、2020年表彰としてブエノスアイレス在住68年の下条善徳さん(99)が祝い状を受け取った。新型コロナウイルスの影響で、表彰はオンラインで行った。

 下条さんは与那城村平安座(現うるま市)出身、1921年2月28日生まれ。37年から真珠貝採取移民としてオーストラリアに移り住んだ。戦時中に捕虜として収容所に入り、医師の手伝いをした。その後は日本へ戻り、52年に勝連半島からオランダ船チチャレンガ号に乗船し、2カ月余りかけてブエノスアイレスに到着した。英語と看護の知識があったため、航海中に助産師として出産に立ち会ったという逸話もある。

 アルゼンチンの日系社会の功労者で、日系子弟の日本語教育や日本への交換留学・研修、ブエノスアイレス日本庭園建設に尽力した。在沖縄県人会でも役員を歴任した。沖縄市町村人会対抗体育大会の発起人でもある。大会会場となるうるま園を67年に購入、整備運営にも力を入れた。2005年のうるま市誕生に伴い、06年にアルゼンチンうるま市民会を発足し、自ら会長となった。

 11年の世界のウチナーンチュ大会では、90歳にしてアルゼンチンを代表してスピーチした。大正から令和を経験した数少ない生き字引として、日系社会で何でも相談に乗る。最近は少し耳が遠いので会話に困難は生じるが視力は問題ない。新聞を読み、愛用のタブレットでメールなどもできる。功労者として勲六等瑞宝章など、各方面から表彰されている。邦人高齢者表彰はオンラインだったため「バーチャル表彰を受けたのは初めて」と初めての経験を喜んだ。

 百寿の誕生日会は昨年2月29日に、自宅で親戚や友人らと祝った。その後、新型コロナウイルスの影響でアルゼンチンは3月20日から8カ月間、強制隔離措置が取られた。現在も社会距離を保たなければならない。しばらく家族や友人に会えず、野村流の会合にも行けずに寂しがっていると、娘の利合子さんは語る。コロナ禍の生活は不便なこともあるが、下条さんは表彰の喜びをビデオ電話のメッセージにしているという。
 (大城リカルド通信員)