ライバルとの鍛錬が刺激に 陸上走り幅跳び・津波響樹<憧憬の舞台へ>


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日本選手権で鮮やかな跳躍を見せる津波響樹=2020年10月2日、新潟市のデンカビッグスワンスタジアム

 昨年、日本選手権で初優勝を飾り、県勢50年ぶり3人目の選手権者となった男子走り幅跳びの津波響樹(23)=那覇西高―東洋大出、大塚製薬=が徐々に実戦モードに入ってきた。体づくりを経て、1月下旬から沖縄で日本陸連主催の合宿に参加。徐々に跳躍練習にも着手し始めている。国内トップ選手と鍛錬を共にし「刺激を受ける」と好環境に身を置く。名実ともに国内トップに躍り出た8メートルジャンパーが、勝負の時に向けて力を蓄えている。

 昨季は10月の日本選手権後、帰省も含めて1カ月のオフに。11月に練習を再開すると、筋力トレーニングや有酸素運動を一定の間隔で繰り返す「サーキットトレーニング」で体の土台を再構築した。12月からは走り込みに注力している。

 本格的な跳躍ではないが、1月下旬からは週1日のペースで踏み切りの練習も始めた。幅跳び用のスパイクを履いたのは日本選手権以来。「最初でやり過ぎるとけがが怖いから着地まではしてないけど、やっぱり跳ぶのは楽しい」と久しぶりの感覚を確かめた。

 例年であればこの時期は海外合宿をしているが、コロナ禍で難しい。そのため温暖な沖縄での合宿が増えている。2月下旬にも母校・東洋大の合宿に参加するため帰省予定という。「少し変な感じ。(地元で)気分がゆったりする」と苦笑いするが、今月6日までの日本陸連の合宿には同じように東京五輪の標準記録を突破している城山正太郎(ゼンリン)や橋岡優輝(日大)も参加。ライバルと鍛錬を共にし「お互いにいいところの盗み合い。いろんな刺激をもらえる」と自然と気持ちも高揚してきているようだ。

 6月には東京五輪の代表内定が懸かる日本選手権があるが、それ以前の出場大会は未定だ。春頃から国内シーズンが本格化するため「3月までしっかり練習を積み、3月下旬から徐々に試合に向けて調整していく」と今後を見通す。

 100メートルを10秒台前半で駆けるスピードは跳躍の国内トップ級。しかし一昨年に初出場した世界選手権で予選落ちし、世界の物差しで自身を計る津波は満足していない。さらなるスピード強化に自信を見せた上で「踏み切りも以前より良くなったが、まだまだ。よりブレーキをかけない踏み切りができれば」とレベルアップした未来を思い描く。

 普段は出身の東洋大を練習拠点とするが、沖縄合宿を通し「普段とは違った環境で練習し、シーズンが近くなってきたなと感じる」と心身に熱が入ってきた。東京五輪の舞台に向け、着実な成長を積み重ねていく。 (長嶺真輝)