ハーモニカとピアノ、情緒豊かに音色融合 比嘉祥人・新崎誠実デュオの初リサイタル


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郷愁を誘う音色を響かせるクロマティック・ハーモニカ奏者比嘉祥人(右)とピアニスト新崎誠実=8日、那覇市のパレット市民劇場

 クロマティック・ハーモニカ奏者比嘉祥人(さちと)とピアニスト新崎誠実のデュオ「クロマティック・ハーモニカ・ラボ」による初のリサイタル「ハーモニカマニア」が8日、那覇市のパレット市民劇場であった。ムーディーの名曲や、釜村僚一作曲の「五つの小品―ヴェルレーヌを讃えて―」などを披露。クロマティック・ハーモニカの味わい深く情緒豊かな音色が、新崎のピアノの美しい音色と融合した。 (田中芳)

 クロマティック・ハーモニカはピアノの黒い鍵盤にあたる半音階の音も出すことができ、普通のハーモニカより音色の幅が広く、郷愁を誘う音色が特徴的。ハーモニカのための作品を50曲以上残したといわれる作曲家ムーディーの「ブルガリアン・ウェディング・ダンス」で幕開けを飾った。

 スペインの風情感じる「トレド」では、華麗な演奏技巧で聴かせ、行進曲のような力強いメロディーを奏でた。比嘉がハーモニカ全体を手で包み込みながら息遣いを感じるソロパートもあった。

 比嘉の師匠である釜村に依頼して今回の公演のために書き下ろしてもらった「五つの小品―」を表情豊かな構成で奏で、音色の空間の広がりを感じさせた。比嘉は「やりたいことが一つ実現できた。初演という歴史的瞬間に(観客に)立ち会ってほしいと思った」と充実感を漂わせた。

 ドビュッシーの管弦楽作品「牧神の午後への前奏曲」を披露。昼下がりのまどろみや、うつろいを開放的な旋律で、新崎の情感込めた演奏も引き付けた。アンコールにはエルガー「愛のあいさつ」で応えた。

 同ラボではハーモニカの研究活動やオリジナル作品の開発を行っている。今後デュオでのコンサート活動を続け、クロマティック・ハーモニカの普及や発展につなげたいと意気込みを感じさせる演奏会だった。