【記者解説】沖縄が陸自輸送艦拠点になる可能性 「軍事要塞化」進む恐れ


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米海兵隊員と陸上自衛隊の水陸機動団が連携して行われた共同訓練=2020年2月9日午後、金武町の金武ブルー・ビーチ訓練場(又吉康秀撮影)

 陸上自衛隊の海上輸送部隊の創設と輸送艦導入は、2019年度から5年間の方針をまとめた「中期防衛力整備計画(中期防)」に明記されており、もともと決まっていた。一方、輸送艦の配備に伴って部隊や艦隊の拠点、弾薬などの物資を集積する補給拠点が必要になるが、中期防で場所は明示されておらず、県内も拠点整備の一つとして検討に上がっている可能性がある。

 また、ここに来て中国当局による外国船舶への武器使用を可能にした海警法の施行を機に、尖閣諸島周辺の情勢を巡って中国への対抗姿勢を強めようという主張が自民党を中心に高まっている。陸自の対処能力の強化を名目に、沖縄の基地負担の増大と南西諸島の軍事要塞化が一層進みかねない情勢だ。

 防衛省は宮古島や石垣島に陸自部隊の配備を進めているものの、離島への隊員や物資の輸送は現状で民間船舶を使うしかなく、有事に安定して使うことができる独自の輸送手段を欲していた。このため輸送艦導入を南西諸島防衛の一環と位置付け、有事の際には、離島奪還作戦を担う陸自の「水陸機動隊」の搬送も視野に入っている。

 中国海警法の施行で不測の事態への懸念が高まる中、政府内には「隙を見せれば中国が影響力を強めかねない」とし、防衛力の強化が必要だとする声が強い。自民党国防族からは有事に備え、民間以外の利用が制限されている下地島空港の自衛隊による活用や、八重山諸島への海上自衛隊の拠点整備を求める声が上がっている。

 陸自の搬送能力向上は米軍の新たな戦略構想にも連動している。米中対立が激しくなる中で自衛隊が前線の役割を担い、有事の際には沖縄が戦闘に巻き込まれる危険性が高まる。

 沖縄を拠点に進む日米一体化は、在沖米軍の固定化にもつながる。名護市辺野古の新基地建設現場に隣接する米軍キャンプ・シュワブに、陸自の水陸機動団が配備される案も取り沙汰されている。

 玉城デニー知事は自衛隊の存在意義を認めているが、宮古島市や石垣市への配備加速や強化には慎重な姿勢だ。シュワブの共同使用について「二重の負担」だとして反対している。政府が頭越しに配備を進めれば、さらなる反発を招く。

 (明真南斗、知念征尚)