環境ビジネスの視点を 呉錫畢・沖国大経済学部長<次期振計骨子案 私はこう見る>(2)


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 骨子案の施策展開の三つの枠組みでは、初めて「環境」を位置付けた。だがこの場合はどちらかというとヤンバルクイナやイリオモテヤマネコ、サンゴ礁を守ろうという側面が強いように見える。ただ経済は現実的だ。自然に配慮しながらも人間の生活も考えないといけない。環境と経済をどのような形でやっていくか、もう少しポジティブに考える必要がある。環境ビジネスに関する記述が不足している。

 一般的に環境と経済は、どちらかに配慮すればどちらかが犠牲となる「トレードオフ」の関係だと見られている。だがこれは1970年代の第2次産業が隆盛を誇っていた時代の見方だ。環境は新たな概念で、ビジネスチャンスとなる。

 特に周囲を海に囲まれ、自然が豊かな沖縄には可能性がある。沖縄で可能性がある再生エネルギーは洋上風力発電だと思う。陸上風力発電は騒音が問題だが、洋上では関係がない。

呉錫畢氏

 日本の環境政策は福島原発事故直後は重要視されたが、自民党政権となってから停滞した印象がある。ただ米国のバイデン政権は、前政権が離脱した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を申請し、環境政策で経済成長を目指す「グリーン・ニューディール」を掲げた。この動きに呼応して菅義偉首相も「2050年温室効果ガス排出量実施ゼロ」を表明した。

 この目標を達成するためには、国は都道府県や市町村単位で排出量の上限を決め、規定を超えるとペナルティーを設けるだろう。排出量は売買され、目標を達成した企業には税制面の優遇措置などが与えられる。

 気候変動の影響は最近の類を見ない大雨や洪水の報道から分かる通り、確実にある。むしろ影響が大きくなってきた時に対策をしても遅いくらいだ。沖縄は昨今の潮流を読み、前もって施策を講じるべきだ。

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 県は2022年度からの次期沖縄振興計画の骨子案に対するパブリックコメントを募集している。2月28日まで。申請方法は電子申請や電子メール、ファクス、郵送で受け付ける。問い合わせは県企画調整課(電話)098(866)2026