奄美で低空飛行急増 在沖米軍機か、前年比2.7倍


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
高さ107メートルの風車と同程度の高さで飛ぶ米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ=4日、奄美市(読者提供)

 【奄美】在沖米軍機とみられる軍用機の低空飛行が鹿児島県の奄美大島で相次いでいる。奄美市で確認された軍用機の低空飛行の回数は2020年4~9月の半年間で55件、19年度の2・7倍に上った。住民からは「沖縄周辺の動きと連動している。島内の山の隙間を縫うようにして飛ぶので怖い」との声も上がる。

 奄美市内に住む40代男性によると、低空飛行しているのは、米軍普天間飛行場に配備されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイや嘉手納基地に配備されているMC130J特殊作戦機とみられる機体が多いという。海側から進入し、川や道路に沿って低空飛行する。午後9時ごろまで飛行が続き、夜間には機体の衝突防止灯を消灯する場合もあるという。

 4日には同市内にある高さ約107メートルの風車と同程度の高さをオスプレイが飛行する様子が確認された。男性は「敵地侵入を想定した低空飛行訓練ではないか。(米軍が展開する)中東の人たちもこうした恐怖を感じているのだろうか」と話した。

 オスプレイは沖縄配備直後の2013年ごろから奄美上空での飛行が確認されるようになった。「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」の城村典文代表(68)は「奄美で日米共同訓練を展開する事前準備ではないかと警戒している。平和な空にするよう、行政や議会に働き掛けたい」と語る。

 奄美市によると米軍機とみられる低空飛行件数は18年度が13件、19年度は20件だったが、20年度は9月までで55件と急増している。九州防衛局は本紙取材に「住民の方々から苦情が寄せられていることは事実」とした上で、日米合意順守などを米側に申し入れていると説明する。

 在日米軍機の高度規制を定めた日米合同委員会合意では、日本の航空法と同様の高度基準(何もない所では海面などから150メートル以上、市街地は300メートル以上)を順守することを定めている。約107メートルの風車と同程度の高度の飛行が確認された4日の訓練について、本紙が在沖米海兵隊に確認したところ、訓練の実施を認めた。高度などについては「作戦保全上の理由から詳細は明らかにできない。全ての飛行は(日米)2国間の規則や同意に従っている」と説明した。飛行時の衝突防止灯消灯については否定した。

 (塚崎昇平、岩切美穂)