【識者談話】基地周辺土地規制、政府の狙いは?高良沙哉沖大教授、前泊博盛沖国大教授の見方


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 政府は、米軍基地などの周辺1キロ圏内で土地の利用の調査・規制を強める法案を今国会での成立を目指している。成立した場合、県内で米軍基地が密集する中部地域などでは広い範囲の住宅街や商業地域が規制対象となり得る。対象になれば、経済活動への制約は大きい。面積の狭い沖縄に米軍基地を集中させていることに伴う弊害と言える。


所有権の自由に反する 高良沙哉 沖大教授
 

 政府に土地の利用状況を報告しなければならないことになれば、個人の所有権の自由に反する。基地の周辺住民が国家に行動が監視され、疑いの目を向けられる事態にならないか、法のラインを注視しなければならない。

 経済的なグローバル化に逆行する規制は、外国資本の自由な経済活動をも締め出す姿勢だと捉えられ、国際的なイメージ低下につながりかねない。

 不当に強い規制となった場合は安全保障上も、周辺国との緊張を逆に高める恐れがある。経済活動よりも安全保障を優先する考え方そのものが、軍事国家の様相を明確にしていると言える。

 法案の全容が明らかになっておらず、憲法上の問題について確定的なことは言えないが、軍事基地が集中し、国境離島を抱える沖縄では深刻な影響が予想される。情報がないまま、議論が進むことは危うい。本当に規制が必要なのか、具体的なデータを踏まえて慎重に議論すべきだ。

(憲法学)

※注:高良沙哉教授の「高」の字体は「はしごだか」


反対運動排除狙いか 前泊博盛 沖国大教授
 

 基地周辺1キロ圏内で私有財産を使用制限・規制するのは、主権の制限につながる。罰則付きで基地周辺の使用制限を行うのは戦前回帰の様相だ。

 名護市辺野古の新基地建設現場周辺海域に設定されている「制限水域」のような緩衝地帯を、陸上にある自衛隊や海上保安庁施設にも適用し、アクセスを遮断する狙いがある。

 法の目的である「重要施設の機能を阻害する土地利用」は敵やスパイのアクセスを封じるというよりも、基地反対派の小屋や監視のとりでといった「反対運動」の拠点を排除する効果があるのではないか。辺野古のような反対運動はさせない、北部訓練場のオスプレイヘリパッド建設反対運動のような、体を張った抵抗も阻止しようという意図がうかがえる。

 国による買い入れが規定されているが、買い取りを拒否できないような環境にもっていくこともできる。

 政令、省令、規則によって、より厳しい規定が設けられる懸念もある。

 (安全保障論)