土地規制法案、嘉手納基地周辺は住宅全域も対象か 公明も「調査際限なし」懸念


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 政府は、米軍基地などの周辺1キロ圏内で土地の利用の調査・規制を強める法案を今国会での成立を目指している。成立した場合、県内で米軍基地が密集する中部地域などでは広い範囲の住宅街や商業地域が規制対象となり得る。対象になれば、経済活動への制約は大きい。面積の狭い沖縄に米軍基地を集中させていることに伴う弊害と言える。

米軍嘉手納基地(資料写真)

 特に米軍嘉手納基地や弾薬庫が指定された場合、面積の8割を基地が占める嘉手納町は、町民が暮らしている全域が「注視区域」になるとみられる。北谷町でも西海岸の商業・観光地域が1キロ圏内に入る。

 宜野湾市は面積の約24%を占める米軍普天間飛行場が中央にあり、大部分が対象区域になりかねない。滑走路の両端で危険を避けるための緩衝地帯「クリアゾーン」も確保されておらず、住宅や商業施設が密集している。

 元々面積が小さい離島は規制割合が高くなる。宮古島市や石垣市、与那国町の自衛隊駐屯地や弾薬庫などの周辺地域も規制対象となり得る。

 防衛施設周辺では、民間の一般的な活動を制限するような法整備が着々と進む。政府は2019年6月、指定された自衛隊や在日米軍施設の周辺で小型無人機ドローンの飛行を禁止する改正ドローン規制法を施行した。

 同法は対象となる防衛施設と、その周囲300メートルが規制範囲となり、飛行には原則として施設管理者などの同意が必要となった。現在、対象施設として米軍普天間飛行場や航空自衛隊那覇基地など6カ所が指定されている。

 報道機関の取材活動に影響が出ているほか、荷物の宅配など今後ドローンの利用拡大が見込まれる分野でも、技術革新の効果を享受できない懸念がある。

 今回の土地利用調査規制法案は、防衛施設周辺に一層規制の網を掛けることになる。法案で懸念事項の一つとなっている地価の下落を含む経済活動への影響について政府は公明党側に、法律が定めた所有者への報告聴取や、利用の中止命令は「極めてレアケース」だとして直接的影響は小さいとの見方を伝え、理解を求めた。

 だが、それでも法案を通じて防ごうとする「機能を阻害する行為」という目的規定の表現が曖昧なことから「(規制強化のため)調査の対象が際限なく広がりかねない」(公明幹部)との懸念が根強くある。同党は慎重に議論する姿勢だ。