[日曜の風・吉永みち子氏]ツールに操られる不安  スマホ脳 


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吉永みち子 作家

 本来なら、今日で緊急事態宣言明けとなるはずだったが、感染者数が下げ止まったとか再増加の兆しがみえるとかで、また2週間延長。国民の気が緩んできているので緊張感を持って頑張れとのお達しだが、大人数の会食や夜のクラブ活動や接待漬けなど緩み切っている永田町方面の方々から緩むな!言われましてもねえ。

 内向き生活がまだ続く中、アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」という本を読んだ。コロナ禍で一気にスマホを見る時間が増えているので、どんな脳なのだ?という興味もあったが、惹句の「スティーブ・ジョブズは我が子になぜiPadを触らせなかったのか?」という部分が気になったのだ。え、本当なの? 何で? それってスマホの怖さを知ってるから、自分の子だけは守ろうとしてるわけ?

 現代の若い人たちは、1日4時間とか5時間とかスマホの画面を見ているらしい。長い人だと7時間。1日平均2600回以上スマホに触るそうだが、コロナ禍でさらにいっそうスマホ時間は増えている。大学生への調査では、画面を見ていなくても、スマホをポケットに入れてスマホの存在を常に感じていると物事を認知する能力が下がってしまうという。ピピッとかブルブルとか存在を主張するし、何か気になっちゃうせいで集中できなくなるらしく、スマホを教室の外に置くなど自分の身辺から離しておくと授業をしっかり記憶できるようなのだ。

 そういえば、大学は長いことオンライン授業を行っているが、タブレット端末による学習は、紙の教科書を使ったリアルな生の授業と比べて著しく学習効果が劣るという記事を読んだことがある。何か集中でき切らないという感じも確かに身に覚えがある。

 なんで人はスマホに依存するようになってしまうのか。なんで眠れなくなってしまうのか。なんで鬱っぽくなってしまうのか。「スマホ脳」は、そんな漠たる不安に脳科学的にアプローチしていて、読後は、かなり意識的にスマホとの距離を考えてつきあわないといけないなあと思った次第。便利でスグレモノで手放すなんてもはや考えられないが、ツールが人間を操ってしまったら主客転倒である。

 ここも気を緩めずに、自分の時間も記憶力も集中力も自分で守らねば!

(作家)