【記者解説】首里城復興計画に財源の課題 人材育成や周辺整備


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首里城=2020年10月30日午前、那覇市の首里城公園(小型無人機で撮影)

 県の「首里城復興基本計画に関する有識者懇談会」が昨年8月からの議論の末にまとめた報告書は、中長期の展開を見据えてハード・ソフトを含めて多岐にわたる施策を盛り込んでおり、実現には財源が一番の課題となる。県は2022年度からの新たな沖縄振興計画に施策を盛り込み、国との連携も視野に入れる。現在集まっている寄付金は主に正殿の復元に使用されるため、別に新たな寄付を呼び掛ける案も有識者から上がっている。

 首里城を中核とした周辺のまちづくり計画の新・首里杜構想は、首里城周辺にあった中城御殿跡地や円覚寺跡、松崎馬場跡、御茶屋御殿などの文化財の整備を見据える。また伝統工芸品の修復拠点形成のため、県立芸術大と連携した人材育成の提言もあった。財源確保と関係機関との調整の観点から、実現には一定のハードルがある。

 一方、しまくとぅば教育の制度化は比較的導入しやすい面がある。玉城デニー知事は9日、有識者懇の委員らに「県もしまくとぅば振興のロードマップがあるが、担当職員が変わっても(振興の)方向性を積み上げていけるような仕組みを考えている」と強調した。

 報告書の施策が実現すれば、沖縄の文化継承の在り方や那覇市首里地区のまち並みに大きな変化をもたらす。今回の再建で首里城に新たな価値を加えられるか、県の取り組みが注目される。
 (梅田正覚)