戦没者遺骨が残る土砂「市民感情に配慮を」 糸満市議会が意見書 断念要求は否決


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糸満市役所

 【糸満】糸満市議会(大田守議長、定数21)は22日の3月市議会定例会最終本会議で、市民感情への配慮や遺骨収集の速やかな実施、農業風景などを守る対策などを求めた「糸満市米須地区の土砂採掘に関する意見書」を賛成16対反対4の賛成多数で可決した。一方、基地建設の埋め立て土砂採取の断念を求めた「戦没者を冒とくする土砂採取の断念等を求める意見書」は、賛成8、反対12の反対多数で否決した。採掘に対し懸念の解消を求める意見書を可決した一方、土砂採取の断念を求める意見書は否決した形だ。

 金城悟市議(無所属)が議員提案し、賛成多数で可決された意見書では「開発区域には、戦時中に避難場所として住民が身を潜めた自然壕が数カ所あり、地元住民も開発に対し懸念している」と指摘。「歴史的事象を語る貴重な場所」「開発区域に隣接し戦没者をまつる慰霊の塔があり鎮魂と平和の発信のための場所」であることなどを挙げた。

 その上で(1)沖縄戦跡国定公園内の米須地区での採掘に対し市民の感情に深く配慮する(2)国の責任において県も協力し速やかに遺骨収集を行う(3)国や県の関係行政機関は、米須地域の農業風景などを守るために必要な対策を講じる―ことの3点を求めた。宛先は首相、防衛相、県知事ら。賛成、反対討論はなかった。

 浦崎暁市議(共産)が提案し、賛成少数で否決された意見書は「遺骨が埋まっている南部の土地から土砂を採取し基地建設に使用することは戦没者を冒とくし、遺族の心を深く傷つけるものである。政治的な立場を越えて県民共通の思いである」と主張した。