サンゴの生育阻害 リン酸塩が影響 琉大などの研究グループが成果発表


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研究で飼育したコユビミドリイシの稚サンゴの骨格形成の状況(研究グループ提供)

 琉球大学や北里大学などの研究グループは22日までに、生活排水などに含まれる「リン酸塩」が稚サンゴの生育を妨げているとの研究成果を明らかにした。リン酸塩などの栄養塩がサンゴの生育に悪影響を与えていることは以前から知られていたが、詳細な内容が解明されるのは初めて。栄養塩を多く含む海域で起こるサンゴの減少対策に取り組むことができ、サンゴ礁の保全に貢献できると期待している。

 グループは、ミドリイシサンゴが多く生息する本島北部沿岸部の砂を入れた水槽と、市街地や農地に比較的近い本島南部沿岸域で採取した砂を入れた水槽、海水のみが入った水槽を準備し、各水槽の中でコユビミドリイシの稚サンゴを約40日間飼育した。

 海水のみで飼育した稚サンゴは、順調に成長した。本島北部の砂を入れた水槽からはリン酸塩が検出され、海水のみで育てた水槽より稚サンゴの成長は遅かった。本島南部の砂で育てた稚サンゴの水槽からは、北部よりも高濃度のリン酸塩が検出され、稚サンゴの成長にも遅れが見られた。

 今回の研究では、陸から海に流れ込んだリン酸塩が沿岸域の砂に吸着し、高濃度で蓄積することも明らかになった。三つの水槽を比較して、グループは「リン酸塩がサンゴの骨格形成を阻害している」と結論付けた。リン酸塩のほかにも、底生生物の生育に影響を及ぼす可能性のある物質が、石灰質の砂に蓄積しているかどうか調査を始めている。

 研究成果をまとめた論文は、英国王立協会が発行する「Royal Society Open Science」に掲載された。