安保法施行から5年 対中国で日米の軍事一体化が加速 沖縄の基地負担強まる懸念


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上陸訓練を行う米海兵隊員ら=2月1日午前7時44分ごろ、金武町の米軍ブルービーチ訓練場

 安全保障法制の施行から5年を迎え、対中国を念頭に置いた日米の軍事一体化が加速している。各種共同訓練や「武器等防護」などを通じて「米国の我が国に対する信頼は高まった」(防衛省幹部)と意義が強調される中、日米が視野に入れる範囲は、台湾海峡や、インド太平洋の広域に広がりを見せつつある。これらの地域は日本の安全保障への影響が大きい一方、米軍施設が集中する沖縄では基地負担が一層強まる懸念がある。

■台湾有事に警戒

 「閣僚は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した」。16日に東京都内で開かれた日米の外交・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書は、海洋進出を強める中国を名指しで批判。台湾情勢を巡る文言も盛り込まれ、日本が果たすべき役割を広げる布石を打った。

 防衛省関係者は「台湾海峡情勢は、日本の平和と安定に密接に関連する」と語り、日本が関わっていく重要性を強調する。

 台湾有事に際して在日米軍の介入を防ぐために、中国側は先島諸島の一部を占領するのではないかとの見立てもある。自民党関係者の一人は「台湾有事になれば、沖縄は巻き込まれる」と断言する。

 昨年11月には菅義偉首相とオーストラリアのモリソン首相が、自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練などに関する「円滑化協定」の締結で大枠合意した。今月12日には対中警戒感を共有する日本、米国、豪州、インドの4カ国が初の首脳会合をテレビ会議方式で開催し、自由な海洋秩序の維持を確認した。昨年11月にはインド沖のベンガル湾で4カ国共同訓練を実施するなど軍事連携も視野に入れる。

 極東エリアでの信頼醸成が進まないまま、軍事増強が進んでいる。

■犠牲前提の議論

 日米が一体的な運用を強めれば、米軍基地が集中し、自衛隊の配備が進む沖縄への影響が大きい。有事の際に巻き込まれる危険性が高まるほか、平時にも訓練激化など基地負担が増す懸念がある。

 直近も夜間に及ぶ米軍機の飛行訓練や外来機の飛来、つり下げ訓練などが問題となっている。低空飛行も相次いで目撃され、29日には県や基地所在市町村でつくる「県軍用地転用促進・基地問題協議会」が沖縄防衛局や外務省沖縄事務所、在沖米総領事への緊急要請を行う。

 これ以上、基地負担が重くならないよう、県は米軍に提供されている土地の面積だけではなく、広大な訓練空域と水域を問題視し、見直しを求めている。

 県幹部は「(日米の一体化による負担増が)あってはいけない」とけん制する。その上で「沖縄に犠牲を強いることを前提とした安全保障の議論はおかしい。沖縄の過重な基地負担の軽減とセットで議論すべきだ」と指摘した。全国に応分の負担を求めていく考えを示した。
 (知念征尚、明真南斗)