<南風>オーム電機新里会長との出会い


社会
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 「もしもし、新垣社長ですか」。電話が入ったのは3年前のある日。「はい、新垣です」と答えたものの控えめなその声に心当たりはなく、「私、新里です。経営協の会合でお会いしてます」と言われてもまだ分からない。出身地を聞いたら「与那国です」と。「え、与那国ですか」(与那国の出身というとあのオーム電機の会長しか…あっ!)。まさかと思い「オーム電機の新里会長ですか」と尋ねると「そうです」の返事。びっくりしつつ「失礼しました」と返答しました。

 そんなやりとりから新里和英会長と私の関係は始まりました。新里会長のオーム電機は埼玉県吉川市にある年商220億、社員600人の大会社です。親しくなったのを機に経営協の重田辰弥顧問を誘い訪問。社員の皆さんがきびきびと緊張感のある声と態度で物静かな口調の新里会長に接していたのが印象的でした。

 最初の訪問時にお食事の誘いをいただき、ナマズ料理で有名な料亭に行きました。一緒にいた娘さんに「お父さんは怒ることありますか」と聞くと、目がキラリとし、待ってましたとばかりに「父は一度怒り出すと30分は怒りが収まりません」「会社では毎日午前中は社員と激論をしてますよ」と。その激論を交わす会長室のテーブルは普通よりも30センチも高く、椅子はありません。立ったままの会議、真剣勝負の場といえるものでした。どおりで社員は皆、緊張感のある態度なのでした。

 親交を深め経営セミナーの講師をお願いし、了解をもらいました。大会社を築き上げた経営者の経験に基づくお話は説得力があり、含蓄深いものでした。新里会長は残念なことに昨年の3月に90歳で亡くなられました。生前新里会長は経営協に多額な寄付をなされ、新里基金が設立されました。天国の新里会長万歳 新里基金万歳

(新垣進、関東沖縄経営者協会会長)