移動スーパー とくし丸、都市部に需要 「買い物難民」救済


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「とくし丸」1号車の販売パートナーの、新田仁子さん(右)=3月12日、豊見城市

 とくし丸(徳島県、新宮歩社長)が運営する、移動スーパーの「とくし丸」。約1200点の商品を軽トラックに積み、高齢者の自宅前で販売している。47都道府県で展開し、買い物難民の救済として注目される。県内ではリウボウストア(那覇市、糸数剛一社長)が商品供給を担い、現在2車両が運行する。2021年度内に、6号車まで拡大させる方針だ。販売パートナーの新田仁子さんが運転する1号車に同乗した。

 2月中旬、とくし丸1号車は那覇市小禄に住む常連の長嶺典子さん(84)の自宅前に到着した。

 新田さんは到着するとすぐにトラックの側部や後部のドアを開け、総菜や弁当などを選びやすいよう並べる。商品は新田さんが午前7時前から約3時間かけてスーパーで選び、詰め込んだものだ。新田さんは「『あの人はこれが好きかな』とお客さんのことを考えて商品を選んでいる。困りごとのある高齢者を少しでも支えたい」と話す。

 長嶺さんは野菜や総菜を購入。週に1度子どもと買い物に行くが、足りない分をとくし丸で補充する。「今までは歩いて10分ほどのスーパーに通ったが、腰を痛めて家にいるようになった」と説明する。

 利用者の多くは、足腰が弱い高齢者や免許を返納した人などだ。家のそばにあった商店が閉まり、買い物が難しくなった人もいる。安谷屋富士子さん(71)=豊見城市=は、とくし丸を見て「昔のまちやーぐゎー(商店)になっているよ」と目を細める。

 移動スーパーは一般的に過疎地域を運行するが、とくし丸は過疎地域に限らず都会地域も回る。リウボウストアの花岡康司取締役営業本部本部長は、「単純に周辺にスーパーがない所を『不便だ』と思い込んでいたが、沖縄の都会とされている所にも買い物難民がいた」と話す。

 とくし丸の強みは、事前の調査力だ。新田さんのような販売パートナーの経営者が安心して開業できるように、リウボウストアの担当メンバーらで2カ月かけて周辺1万世帯を訪問し、ニーズ調査をする。1台で120件の顧客確保が目安だ。日販は平均10万円程度という。

 とくし丸本部の金本丈二SV統括マネージャーは、「軽トラックも、単純に見えて何度も改良している。日販売り上げも右肩上がりで推移している」とする。

 リウボウストアにとってとくし丸は発展途上の事業だが、今後は収益の10%を目指す。花岡本部長は「小売業は地域に貢献するという大前提がある。買い物難民を支援する取り組みを事業として継続することで、企業として一歩成長できる」と語った。 (石井恵里菜)