「基地反対」沖縄エリート利益 大田元知事は「ゆすり戦略」 ハーバード大教授が論文 事実誤認や根拠不明の記述も


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「沖縄エリート」たちは基地からの対価をつり上げるために基地に反対し、多くの県民は補助金から得るものがないとした上で、「ゆすり戦略」を積極的に取ったのは大田昌秀元知事だったとする、ラムザイヤー氏の論文

 米ハーバード大学ロースクールのJ・マーク・ラムザイヤー教授が論文で、沖縄の米軍基地問題を巡り、公務員や軍用地主など「沖縄のエリート」が補助金や給与、地代を上げるために基地に反対し、大田昌秀元知事は「ゆすり戦略」で補助金をつり上げることに成功した、などと書いていることが分かった。また、沖縄は、犯罪や家庭内暴力、飲酒、教育水準の低さなどの問題があり、一部の裕福なエリートと貧困層の社会的な「機能不全」があるとしている。

 ラムザイヤー氏は別の論文「太平洋戦争における性行為契約」で、日本軍の慰安婦制度が「商行為」だったとし、米国内外の学術界から、恣意的な論の展開や不正確な資料引用があると批判が広がっている。

 論文は「下層階級の監視理論―被差別部落出身者、在日コリアン、沖縄人を事例に」のテーマで2020年1月に発表され、大学のウェブサイトに掲載されている。

 マイノリティーの集団には社会資本の欠如があり、集団内のエリートや指導者が「下層階級」を搾取しているという論を展開している。

 同氏は、米国や他の地域の事例を基にした同様の考察は「政治的な論争があり、非常に難しいので避けた」としている。

 沖縄について、米軍普天間飛行場は「日本軍が土地を購入し(注釈・借りたのではなく購入した)、1942年に工事を始めた」と、日本語の本を引用して事実誤認を記している。普天間飛行場は沖縄戦で米軍が住民の土地を強制接収して造り、日本軍は関与していない。

 普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設について「一般市民は普天間飛行場が市の中心部から撤去されることを望んだ。地元のエリートは私的な利益を目的に、本土の活動家は政治目的で、反対を生み出し、あおった」と記述しているが、根拠は示していない。

 「沖縄の機能不全」と題した項目では、県民所得や貧困率、失業率、離婚率、学力テストの結果などの表を基に「沖縄はひどくバランスの取れていない世界」と分析しているが、データは政府統計などからの直接の出典ではなく、沖縄の貧困を取り上げた本から引用している。

 国からの補助金についての記述では、宗教関係者のホームページから引用した。

 ラムザイヤー氏の専門は会社法などで、大学でのサイトに掲載されている肩書きは「三菱日本法学教授」。2018年、日本政府から旭日中綬章を受章している。