有事 沖縄は最前線に リスク周知なく同盟強化<日米首脳会談>


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 16日(日本時間17日)に行われた日米首脳会談は「台湾海峡の平和と安定の重要性」で一致し、首脳会談の声明で52年ぶりに台湾情勢に言及する異例の内容となった。菅義偉首相はバイデン大統領と臨んだ会談後の会見で、地域情勢の変化を踏まえ「同盟強化の具体的な方途について、両国間で検討を加速する」と表明した。米国による地上発射型の中距離ミサイルの配備構想を含め、沖縄の基地負担増につながりかねない議論が頭をもたげる。台湾と近接する沖縄は、台湾有事となれば最前線となる懸念をはらむ。そのリスクが周知されないまま、日米同盟の“対中シフト”が進んでいる。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を進めることも改めて確認した。軟弱地盤の発覚などで工期が延び、工費も膨らむ見通しとなり、米側からも完成を困難視する声が上がる中、現行計画に拘泥する姿勢が浮き彫りになった。

 「日米同盟はインド太平洋地域、そして世界の平和、安定と繁栄の礎だ」

 会見で菅氏は、日米同盟の役割を強調した。外務省によると、日米首脳会談の共同声明で「台湾」に言及するのは、佐藤栄作首相とニクソン大統領(共に当時)の間で行われた1969年以来、52年ぶり。沖縄返還に合意した節目ともなった文書で、佐藤氏が、台湾における平和と安全の維持が「日本の安全にとって極めて重要な要素」だと述べたことが盛り込まれていた。

 今回の記述は3月の日米の外務、防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)の文書を踏襲しており、首脳レベルで再確認した形だ。「両岸問題の平和的解決を促す」との表現を盛り込み、中国への配慮もにじんだ。

 一方、岸信夫防衛相も17日、陸上自衛隊与那国島駐屯地を視察し「国際社会の安定にとっても台湾の安定は重要だ」と述べた。台湾重視の姿勢を重ねてアピールした。

 防衛省幹部は「日本の平和と安定は、地域の平和と安定と分かちがたく結び付いている」とし、日本が周辺情勢に積極的に関わっていく必要性を語った。